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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.235「あいつは無謀やと言われるようなやつこそ、何かを成し遂げるものです」

KEYWORD 奥田靖己

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Masaaki Nishimoto

>>前回のお話はこちら

  • 高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。 PHOTO/Tadashi Anezaki >>前回のお話はこちら 最近の日本の女子は、アメリカのツアーで頻繁に優勝争いに加わっています。すごいですよね。まあ、理由はいろいろあるやろうけど、まずは、日本の女子プロ……

今の女子プロとか若い子たちは皆、ホントすごい前向きにやりますよね。自分のあらを探すんやなしに、自分はもうちょっとこういうふうにやればもっと上に行ける、優勝できる、そういう気持ちでやってます。

前向きな気持ちみたいなもんは、年齢を重ねると次第に薄れてくるもんです。そらもう成功体験も失敗体験も、良いことも悪いこともぎょうさん経験してくると、物事を冷静に分析してしまうから、それが一番悪い。

世の中なんでも冷静に分析をするんがすごくいいように思われてるのかもしらんけど、それは反対です。分析すればするほど、枠から外れたようなことをやろうとは思えない。思えないからできないんですよ。


僕は今65歳で、全英シニアオープンなんかにもまだチャレンジできます。でも出場するには経費はこれくらいかかるし、最近は旅費も上がって、とか冷静に考えてしまうわけやないですか。でも現実にはお金はあるし、挑戦しようと思えば行けるんですよ。

自分より若い選手らは下手くそやと思うてもバーンといったら上手くいくかもしれない。でもそう思わんのですよ。なんや冷静に、今の僕やったら飛ばんしなとか、いろんなことを頭の中で考えてしまうんです。行ったらええのにね。

でも若い子らは、行ってきまーすでいくわけです。他人から見て、あいつは無謀やとか馬鹿やとか言われるようなやつこそ、何かを成し遂げることができるもんです。

僕なんかも若い頃は怖いもんなしでした。大学出ていい会社に就職してという路線を1カ月はやりましたけど、やめてプロゴルファーを目指したわけです。まあ、無謀ですよね。親にも言いました。「俺、プロになりたいんやけど」って。親からは「巨人の星か」って言われましたけどね。ゴルフの技術や成績が学生のときから秀でていたわけやないし、僕より上手な人はいっぱいいましたよ。だからそのときに冷静になって、自分がプロになるなんて無理やと思っていたら、今の自分はなかったです。

そのときに頭にあったのは、「なりたい」とか「イケる」といった前向きとも無謀ともいえる、気持ちだけでした。

「冷静は美徳みたいになっとりますけど、そうやない『行けー!』の時期もあってええと思います」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2025年7月29日号より