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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.207「思いが打っているんだ」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Hiroaki Arihara

前回のお話はこちら

ちょっと前のことです、僕が昔から憧れていた先輩プロと久しぶりに一緒に回ったんです。もう70歳超えてはるんですけど、若い頃のイメージは、球を絶対に曲げない、一車線か二車線でゴルフができるようなタイプの選手でした。風のなかでも上手いしね。

ところが、久しぶりに一緒に回らせてもらい驚いたんですが、アプローチがイップスみたいになってしまっていてね。クラブを上げて、打とうとするけど打てんと、また戻る。また上げて打つ気やけど打てんと、また戻る。ワッグルしてるわけやないんですよ。打てないんです。パターもそんな感じなんですよ。


それで、ごめんね、ごめんね言うて人に気を使うて回るんですけどね。もちろん、自分もこの数年ドライバーのイップスで悩んでいただけに、年齢には勝てないというのはわかるけど、自分が憧れていた名選手でも、そうなんねんやなって思うて、少し寂しかったですね。

イップスみたいなもんは、人によってドライバーにくる人もおれば、パターにくる人もおる、人それぞれです。自分もそうやったと思うんですけど、イップスってなんかドンくさいことをしているような感じになってくるんです。見てて潔くないんですわ。

見てて潔いなと思うんは海老原(清治)さんです。以前、その潔さに通じるようなこんな話を聞いたことがあります。

なんか思ったような球が打てんなと思っている僕に対して海老原さんから、「奥ちゃん、お前さ、何とかアソコに行ってくれとお願いしながら打っているだろ。だからそんな球になっているんだよ。どうなってもいいって思って振ってみな」と言われたんです。それで、「心がショットをしているんだ」と言う。「お前がショットをしているんじゃなくて、お前の心がショットをしているんだ」って。要するに、筋肉がクラブを持って打っていると思うかもしれないが、そうやなしに、「思いが打っている」んやというわけです。

どうなってもいい、イケェ~と思って振っておるから海老原さんのスウィングはいつも潔く見えるんや思います。

「海老さん、相変わらず潔く振っておられますわ」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年12月24日号より