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「日本障害者オープン」の舞台ウラ<前編>今年で29回目! 主催者の想いとは?

障害者ゴルファーの日本一を決める「日本障害者オープンゴルフ選手権」が今年も開催された。第29回目を迎える本大会、ここまで長く続けられた理由、これからの課題は何か。まずは、主催者、そして開催コースのスタッフに話を聞いた。

PHOTO/Yasuo Masuda

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大会をサポートする
ボランティアたちの想い

大会を主催する日本障害者ゴルフ協会(DGA)はNPO法人であり、本大会は基本的にボランティア活動で成り立っている。

「そもそもゴルフは運動学的にいうと、上肢の可動域を広げられる、体幹の捻転運動。アンジュレーションの多いコースを歩くことも含め、リハビリや健康のためにいいんです」と語るのは元国立身体障害者リハビリテーションセンター運動療法士長の水田賢二氏。この観点なくして、障害者ゴルフは語れないだろう。しかし協会・大会の発展とともに、競技志向の選手が増えてきたのも事実だ。

「『ゴルフをパラリンピックに』を掲げ、競技としてルールにのっとって行うこと、本人や家族ができるだけ楽しくゴルフをやること。両立は難しいけれどそういう環境作りをDGAが中心となってやっていきたいですよね」と語るのはご自身が障害を持つ子の親でもある真辺和美氏。

競技委員も務める石塚義将氏は競技者の観点からこう語る。「ここ数年の海外の障害者ゴルフの流れで、日本でも国際基準を取り入れる必要がある。そういう変化には対応したい。道のりは長いけど、障害者のプロがゴルフを職業として選べる時代がくるといいです」

組織や大会が成長する過程には問題や課題が発生する。それぞれの想いが交じり合い、真摯な選択をするからこそ道は続く。

松田治子氏は「今大会は募集後2日間で定員に達した。来年からは予選会も行い(関東、中部、関西)、きちんとしたオープン競技にしたいと考えています。もちろん“参加することに意義がある”という方を振り落とすことではない。いずれにせよ私たちが止めると障害者ゴルフが途絶えてしまう。とにかく地道に続けることです」

「競技者として限界を感じ自分で協会を探した。身を捧げれば社会貢献やパラリンピックという発展的なシナリオがある。精神的にも満たされます」
右・河合祐治(選手担当)
左・緋田幸朗(渉外担当)

「私情が入らぬよう、あくまで公平に障害を見てクラス分けします。ゴルフは障害があっても遜色なくできる。前向きな人しかいないのもいいですね」(中山侑哉/クラス分け・理学療法士)

右から●林聰(進行管理・税理士)、小竹瑠奈(競技委員・プロゴルファー)、真辺和美(理事)、水田賢二(副代表理事)、松田治子(代表理事)、浜田雅道(事務局次長)、石塚義将(事務局長・プロゴルファー)、川崎静(看護師)、小口一城(広報)、内山由利子(事務局・通訳)

「ゴルフは障害者も含めてのコミュニティとなるスポーツです」(麻生健/大会会長・麻生塾理事長)

麻生グループは、22年、23年に150周年記念事業として男子ツアー「ASO飯塚チャレンジド」を開催した。「この時のプロアマにDGAメンバーに参加してもらい非常に喜んでもらえました。我々のグループは飯塚市とともに車椅子テニス大会を40年行うなど障害者スポーツへのサポートに取り組んでいます。私も大好きなゴルフでも“場”を提供したいという中で、今回ご指名いただき大会の開催となりました。障害者が公の場に出ること、仲間を見つけること、負けん気を養うことなどのきっかけになれば。ゴルフは年齢や性別はもちろん健常者と障害者が一緒にできるコミュニティとなるスポーツだと思います。支え合うことは社会にとって必要ですし、何より障害者ゴルファーの明るい姿勢を見ると感謝の心が生まれるはずです」(麻生)

コースにとっても
大きなチャレンジ

大会の開催が決まったとき、会場となる麻生飯塚GCのなかには「大変そうだなあ」感じる人も多かったようだ。

「でも、スタッフが皆、チャレンジしたいと言ってくれた。僕はもう大舟に乗った気持ちで。理事会も、いいことだからどんどんやれと2つ返事でOKでした」と語るのは社長の森山泰行氏。

「スタッフの対応はどうするか、整っていないインフラをどうするか。グループに介護の会社もあるので、車椅子のプレーヤーが多いようなら人を手配する話をしていました。当然営業が制限されます。結果的には貸し切りに。メンバーさんのご協力もありました」

12人いる管理課の皆さん。「直前の要望にもなるべく応えられるように、気持ちの準備もしていたんですよ」(原中氏)。日本では車椅子がグリーンに乗ることに難色を示すコースは多い。「やってみる」、その上で「課題を見つけ解決する」。これを発信し続けていくことも必要だ

原幸志氏とグリーンキーパーの原中操氏は、春のDGAの大会(四日市CC)を見学したことがよかったという。

「車椅子でのプレーを見たことがなかった。実際に見られてよかったです。グリーンに轍もできておらず、これなら大丈夫だと安心して持ち帰った。また、キャディがいつもと違うルールをどれくらい把握しないといけないのかも心配していましたが、JGAなど競技委員の方に全部聞けるので助かりました。その他、お風呂の階段には人手が必要かなと思っていましたけど、選手の方のほうが慣れていて、逆にお風呂は入らない、普段通りの営業でいいと」(原氏)

決まったらやらないという選択肢はない。その日に向かって皆で頑張っていくだけだ。

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週刊ゴルフダイジェスト2024年12月10日号より
※文中一部敬称略。肩書は大会開催パンフレットによる