【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.192 イギリスのパブで出会った翁が語った「GOLF」の語源とは?
PHOTO / Masaaki Nishimoto
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
先週の全英女子オープンで今年の海外メジャー競技はすべて終わりました。まあイギリスはゴルフ発祥の地やから、歴史を追っていくと諸説あって面白い発見があります。
50歳になって初めて全英シニアオープンに出たときに、パースという街に泊まって夜にパブに行くと、イギリス人のゴルフ好きのお爺がおって、「オマエは日本人か」って話しかけられました。それで「シニアオープンに出るんや」言うたら、「そうか、まあ一杯飲め」とビールをおごられて。
そのときに片言の英語で会話をしたんですけど、『GOLF』の語源を教えられました。「Gentleman Only Ladies Forbidden~ジェントルマン、オンリー、レディス、フォビドゥン」。「フォビドゥン」というんは禁止です。つまり「女人禁制」が語源なんやと。
歴史をたどっていくと女性がゴルフできん時代が長くあって、それでカーヌスティが初めて女性のメンバークラブを作ったんが250年前。その記念すべき女子の第1回大会のとき、いまだクラブハウスは女人禁制なんで外で表彰式をやってたら雨が降ってきて。そんとき、クラブハウスのカーテンがサッと開いたから女性たちはハウスに入れてもらえるもんと思ったけど、入れてくれへんかったらしいですわ。もちろん、イギリス人のお爺が言うんは“一説”やから真偽の程はわかりませんけど。
「ニッカーボッカー」は、ひざ下丈のズボンをふくらはぎの上でベルトで止めるやつですが、これはラウンド中に“卵を産めない”ようにしたもんらしいです。
昔はダボダボのズボンでポケットに穴開けて、「ボールあったぞ!」言うて球を落とすやつがおった。「僕はそんな不正はせん」ということの表明のためにはいたんがニッカーボッカー発祥の由来やと。まあこれも一説ですけど。
日本に帰国してから興味が湧いて、歴史の本を読んだりしていると、ゴルフ倶楽部の会員規約の中に「会員は必ず賭けなければならない」いうのや、「必ず晩さん会に出席のこと」いうんがある。だからハウスには必ずバーがあってそこでお金のやり取りをしたわけです。“ニギリ”はご法度でスポーツとして見ている、日本のゴルフ観とはちょっと違っておって、面白いですよね。
「人の話を聞いたり、本を読んだり。そういうゴルフの楽しみ方もありますわ」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2024年9月10日号より