「目の前の1打、スコアに一喜一憂しない」ジュニアゴルファーに伝えたいこと
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。今回はジュニアゴルファーの育成について心掛けていることを話してくれた。
GD 黄金世代やプラチナ世代など女子プロの若年齢化が進んでいますが、この傾向はジュニアの教育・育成に影響はありますか。
目澤 ありますね。女子だけではなく男子プロも最近は若年齢化が進んでいて、若くして優勝するプロが多く出るようになりました。そうなると、ジュニアゴルファーの中に、自分たちも「若いうちから活躍しないと」という気持ちが出てくる。特に、親御さんはそうなる傾向にあります。もちろん、自分の子供に早く成功してほしいという気持ちはわかるし、指導者である僕らも教え子に成功してほしいと思っていますよ。でも、ジュニアのころに大事なことは、目の前のことに一喜一憂しないということなんですよね。
GD 試合の結果とかですか。
目澤 そうです。極端なことをいえば、試合なんて調子が良ければ勝てたりするわけで、そんなことに一喜一憂してほしくない。それよりももっと大切なことがあるんです。
GD 例えば?
目澤 まずスウィングの基礎を固めることが大事。そして、球を遠くに飛ばすこともジュニアのころに覚えておいたほうがいい。この時期にやったことが潜在能力として育まれることはあるので、大人になってから飛距離を伸ばそうと思ったときに、必ず役立つはずです。
黒宮 飛ばし屋プロは、最初は曲がることを気にせず飛ばすことを覚えるといいますよね。
目澤 結果に一喜一憂しないという意味では、ある一定期間に練習するテーマを決めたら、その期間中に試合があってもスコアに左右されずに、その課題をやり続けるクセをつけてほしい。気持ちの強さを子供のころから習慣づけておくことも大事です。そして、一定期間続けていてもダメな場合は、これはダメということを知るべきだし、それを判別できる能力もジュニアのころに身に付けておくのは大事なことです。波があるスポーツなので、上手くいかないことも上手くいくことも両方ゴルフの本質であるということを、わかるように育ってほしいなと思います。もちろん技術的な指導もしますけど、たぶん、まだわからないだろうなと思いつつ、与えた課題に関して「どうやったら直ると思う」と聞いたりもします。
GD 迷わせて自分で考えさせるわけですね。
目澤 そう。迷うことが大事で、その習慣を持たせるようにしています。僕らの時代では、「600発球を打って体で覚える」というような指導でした。それも大事な練習だと思いますし、そうやってきた中で上手くなってプロになった人もいる。でも今の小さい子たちには『考えるということも練習だ』というのを頭に刷り込んでいかないといけないと思っているんですよ。
GD どうしてですか。
目澤 今はスマホで検索すれば答えがすぐに出てくるので、自ら考えない子が増えている。それはゴルフでも同じです。ワンクリックで出した答えはすぐに忘れてしまうけど、頭の中で迷い考えたモノは、絶対に身に付くからです。
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2021年4月13日号より