【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.3「僕にはコレがある」切り札クラブを作りたい
元プロ野球選手・谷繁元信が日本ミッドアマ出場を目指し、青木翔コーチのもと研鑽を積む本企画。「元プロ野球選手ならボールのとらえ方はお手の物でしょ」と、よく言われるという谷繁。しかし、体の使い方には大きな違いがあるという――。
PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/六甲国際GC
セッティングはオーソドックス
道具を上手く操れるかは僕次第
青木 谷繁さんが初めてゴルフをしたのはいつ頃ですか?
谷繁 小学校低学年のときに父と一緒にやったことはありますが、それはほんのお遊びで、その後は野球一筋。46歳でユニフォームを脱ぐまで40年近く野球漬け。そりゃ、野球の動きが染みつきますよ。
青木 ボールを打つのは同じですが……。例えば、どういうところですか?
谷繁 深く考えれば考えるほど、プレーすればするほど、気付いてきました。手首、ひじ、下半身の使い方、どれも違います。バットスウィングのまんまゴルフクラブを振ったら、ほぼ全部スライスです。振り遅れるので。
青木 はい、会ったことないですね、ドローボールを打つ野球選手は(笑)。
谷繁 バッティングの動きが染みついていないピッチャーならいるかもしれないですが……。
青木 理屈ではわかっていても、自然と出る動きがありますからね。
谷繁 あとは下半身と上半身の“時間差”の問題。ゴルフでは下半身が先に動きますが、バッティングではほぼないですから。
青木 野球をそういう目で見たことがなかったですが、言われてみればそうですね。
谷繁 スウィングとか回転とかは、すごく理解できるんだけど、道具の操り方が違うんですよねえ。そう、野球って道具の進化があんまりないんです。
青木 ゴルフは理論のほか、道具の進化が著しいスポーツです。それは野球との違いではありますね。10年、20年で、クラブはどんどんミスに強く、やさしく、飛ぶようになってきていますが、グローブやバットは劇的な進化はないですよね。
谷繁 バットの形もちょっと太くなったり細くなったりする程度。あと、人間の体も、構造が進化することはないでしょう。だから、道具の操り方次第なんですが、野球にはまずセオリーがある。セオリーのもと、練習で微調整していって“自分の型”ができる。型を持ってる人は強い。それがあっての応用力です。この点はゴルフと同じですよね。
青木 応用力というのは、谷繁さんが常々言っている「引き出しを増やしたい」ですね。
谷繁 そう。野球の引き出しは薬箪笥ほどあったけど、ゴルフの引き出しは学習机レベル(笑)。
青木 野球のピッチャーで言うと、球種が少なすぎるということ?
谷繁 あー、ピッチャーの球種とは少し違うかな。例えば、大魔神・佐々木主浩さんの球種はストレートとフォークの2つ。ただ、そのフォークが4種類あったけど(笑)。あと、藤川球児もストレートとフォーク。ただ、そのストレートが俗に言う「火の玉ストレート」だから。球種が少なくても、佐々木さんのフォーク、藤川のストレートみたいな圧倒的な決め球があればいいんです。一方でダルビッシュ有の持ち球は、ストレート、スライダー、カットボール、シンカー、カーブ、フォーク、チェンジアップ。それが全部、超一級の決め球レベル。だけど、勝ち星はチーム事情や自分の体調などと噛み合わないと伸びないから。もっと勝ち星がついていい投手なんですがね。
青木 谷繁さんも、ゴルフで決め球みたいなものを持ちたいですか?
谷繁 欲しいですねえ。「僕にはコレがある」みたいなの。
青木 自身の考えはありますか? 例えば、このクラブを極めたいとか。
谷繁 僕のセッティングはごくオーソドックスで、1W、3W、2U、3U、4I~9I、PW、52度、58度、パター。最近ウェッジを3本、4本入れるのが流行りですよね。でも僕は2本。となると100~120ヤードをPWでカバーしないといけない。
谷繁の“スタメン”14本。ウッドはキャロウェイのパラダイム。UTはAPEX。アイアンはスリクソンのZXでパターはオデッセイのジェイルバード
青木 PWは強化ポイントですか?
谷繁 そうそう。だから、僕のスタメン14本のなかでPWを宮本慎也にしたいんですよ。
青木 はいっ? あ、守備範囲が広いということですか?
谷繁 それもあるけど、慎也なら、ややこしいライでもうまく対応できそうだから(笑)。対応力重視で、慎也が僕のPWドラフト1位です。
青木 僕が教えている新垣比菜は、PW、50度、58度というちょっと変わったセッティングで、50度の打ち分けが重要になってくるので、練習でも時間を割いていますよ。
谷繁 よし、僕の慎也をもっと鍛えます!
週刊ゴルフダイジェスト2024年3月26日号より
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