【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.183「プロ40年、“ゴルフの本当”はまだこれから」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Shinji Osawa
スウィングコーチの増田哲仁さんとのやり取りですが、「ヘッドを振る練習」と、「ヘッドを振らない練習」とを、今やってます。僕はこれまでは、ヘッドを振ることばかり練習をしてきましたから。
ヘッドを行かさない練習をしたら、勝手にヘッドが行くというんです。まあ禅問答みたいなもんですね。
ヘッドを上げない、ヘッドを下ろさないということを、アマチュアの人はまず練習しません。絶対にヘッドを行かす練習をします。となると、世の中で言う“手打ち”とかそういうことになっていきますよね。そうなると“当て方”の練習になってきて、ミート率は上がるかもしれないけど、やっぱりボールは飛ばんのですよ。
“当て方”になってくると“コチコチおじい”がやっているように、「コチーン」とやるイメージになっていきますから。
体は、歳がいくとどんどん動かなくなります。それに輪をかけて、力ずくで踏ん張って自分を止めようとするでしょ。そうすると、どんどんスピードが出なくなる。でも本人はスピードを出そうとしておるんですよ。スウィングの円弧も小さくなるしね。
だから一度、考えてみたらどうでしょう、ヘッドを振らない練習いうのを。「ヘッドを感じよう」い
うことはもちろん大事なんです。けれど、グッと握った瞬間に、感じることはできなくなりますから。
スプーンを軽く持ったら重さを感じることはできますけど、これをグッと持ったら感じることができません。そういうところもゆるいほうがいいという理由やし、一番飛ばす秘訣なんやけどね。
でも、振ろうと思うと力が入る。そのへんのところが今年はちょっとわかるようになったなと。まあ、できるできないは別として、頭の中では理解してきましたわ。
僕らプロ、このあいだプロ入り40年の表彰してもらったんですよ。「40年、ご苦労様です」という。
PGAから表彰状が送られてくるんです。それもまあ嬉しいっちゃ嬉しいんやけど、40年やっとっても、ずっと悩んでるなあと思ってね。
だから、僕らでも“ゴルフの本当”なんてわからない。だからわかったようなこと言うてるやつはもっとわからんいうことですわ。
「やっぱり、振ろうと思うと、力は入るんですわ」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2024年7月2日号より