【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.300「池に愛されるゴルフの巻」
グリーンの周りに配される池やバンカーは意識しないようにと思っていても、打ってみるとなぜか、吸い込まれるように行ってしまうことが多いんですよね。この理由がなぜなのかはわかりませんが、以前行ったゴルフ場では散々な目に遭ってしまいました。皆さんもご注意ください
ILLUST/Chuji Aoshima
過信が最悪の結果を招いてしまう
ここのところ、コースに出ると池ポチャが多い。たまたまプレーしたコースのレイアウトが、グリーンの手前に池があるホールになっていて、初めのうちは、まあ乗るでしょうと気楽にショットをしていた。
しかし、アゲンストの風が思っていたより強く吹いていたようで、まさかの池ポチャになってしまった。グリーンまでが130ヤード、見栄を張って9Iを持ってしまった。9Iならば、130ヤードはどんぴしゃりの距離なのだが、8Iで軽く打ったほうがよかったのだ。アゲンストの風が吹いているのを計算に入れていなかった私のミス。
確かに友人がキャディさんに「風はアゲているよね」と聞いていた。すると、「お客さん、このホールはティーイングエリアで感じるよりも上のほうは風が強いんです」と。この会話を耳にしていながらも9Iをチョイスしたのは己の過信としか言いようがない。
クリーンヒットでベタピンだ!と思いきや…
さてその次は、別のホールのパー4、360ヤード。グリーンの左に池がある。1打目はクリーンヒットでフォローの風に乗り、240ヤード飛んだ。筋トレもせず、普段は扇子しか持たないような私には上々の出来。グリーンキーパーさんの機嫌が悪かったのか、本日のピンは池寄りの左に切ってある。
安全性を考えれば、無難に右サイドに乗せて2パットがいいのだが、グリーン中央に乗せても、ポテトチップスのような形状なので、3パットの可能性が大である。しかし池ポチャよりはよかろうと、グリーン中央に向かって打ったつもりの残り120ヤードの9番アイアン。見事にクリーンヒット。
ところが、中央を狙ったつもりがピンのほうにどんどん向かっている。しかもグリーン左の池ギリギリにピンが立っているので、穴に向かってまっしぐらか、手前の土手にオンかと思いきや、ポーンと跳ね、ポチャーンという快音を響かせて私のボールはブクブクと沈んでいった。友人も「ベタピンかと思ったのに。受けているからねぇ。まあドンマイドンマイ」
打ち直してグリーンに向かう。池を覗くと、とても澄んでいるので、池のフチから私のボールを見つけることができた。なんだかとても寂しそうに見えたので、腕を伸ばして拾おうとすると、キャディさんが慌てて「お客さん、危ないですよ。そうやって池のボールを拾おうとして、ご自身が池ポチャになったお客さんを何人も見ていますから。ちょっと待ってください」。
グリーン脇に網があり、それでボールを拾ってくれた。濡れたボールを拭いてくれて、手渡す折に「ボールもお客さんの元に戻れて喜んでいますよ」と言われて戻ってきたボールを二度となくすまいと思い、プレーを続ける。
安全策を取ったのに3度目の池へ
13番ホールは浮島絡みのパー3、150ヤードである。すると以前の池ポチャの悪いイメージがどんどん広がり、ティーイングエリアに立つと、池がどんどんどんどん広がっていくような気持ちになる。確か友人がフリスクを持っていたので、3粒もらって食べ、清涼感が口の中いっぱいに広がるものの、池のプレッシャーと大きさは変わらなかった。
150ヤードなら7Iか8Iかで悩む。そうだ、風を読まなければ。キャディさんに聞くと、ちょいフォローだという。しかし、カップは手前に切ってあり、先に打った友人は池とピンの間に乗せ、ピンそば1メートルくらいにつけている。そいつは私と同い年で、ゴルフの腕前も80台後半から90前後でレベルもほとんど変わらない。そいつは8Iでビシッとターフを取りながら打ち込み、勇気を持って臨んだ結果のベタピン。
ならば私もと、8Iを手にすると、心のどこかで弱い自分が「おい! 池ポチャになるかもよ。ここは乗せることだけを考えて安全に7Iでいったほうがいいよ」と私に語りかけてくる。心の声に従おうとすると、また別の私が「お前、あいつが8Iでベタピンなのに悔しくないのか。イチかバチかお前もトライしてみろ、根性なし」とけしかけてくる。
しかし、その日はそんなに叩いていないし、池に対する恐怖心を払拭するため、7Iで軽く乗せてパーを取る安全策に出る。そうなると気持ちも楽になり、フリスクも効いてきたのか、リラックスしてゆったりとしたスウィングで、カキーンと音がしてトップしたボールは、ライナーを描いて池に吸い込まれていった。ポチャーンという音が響く。せっかくキャディさんが、前のホールで池から拾ってくれたボールがまさかの池へ。しかも一番深いところなので「今度は諦めてください」とのこと。
それから池ポチャがずーっと続いている。このスランプをどうしたらいいか、池ポチャからどう逃れればいいのか、ご存じの方はぜひ編集部へご一報くだされ!
思い切って “いけ”ないのは 不安の表れ
月刊ゴルフダイジェスト2024年7月号より