【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.811「大きな花火を打ち上げるより、コツコツの積み上げが大切だと思っています」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
先日、岡本さん主催のレジェンズのトーナメントが開催され不動裕理選手が2連覇されたという報道を見ましたが、詳しい内容が載っていなかったので知りたいと思い今回お便りさせていただきました。(匿名希望・HC8・61歳)
名古屋から伊勢湾に突き出している知多半島。
その先端くらいのところにある新南愛知カントリークラブで大会が開催されましたが、ここはわたしにとって何かと思い入れの多いコースです。
最初の出合いは1990年代の初め。
新設ゴルフ場のアドバイザーに迎えられたことでした。
長靴を履いてまだ形になっていないコースの造成現場を歩いたのを今でもよく覚えています。
92年4月の開場以来、プライベートでも度々プレーする機会があり、2005年にわたしが世界ゴルフ殿堂のメンバーに選出された折には、ここで記念のプロアマ競技大会を開催していただくなど何かとご縁がありました。
そのコースからレジェンズの大会(45歳以上)を開催したいというお誘いを受けました。
国内女子ツアー東海クラシックの舞台となってきた今コースは、選手たちにも馴染みがあることもあって準備に入り、昨年の4月に初めて開催することになりました。
ゴルフというスポーツの楽しさ、素晴らしさをもっともっと広めたい。
新南愛知CCの森田勉司社長は、その熱い思いと地元愛を込めてコーススタッフの協力のもと、このイベントを作り上げてくれました。
2回目となる「美浜インビテーショナルレジェンズ岡本綾子カップ」は、歴代賞金女王を含む42選手を集めて行われ、不動裕理選手が見事に連覇を果たしました。
不動さんはレギュラーでの優勝は2011年5月のサイバーエージェントが最後とあって、昨年のこの大会で久しぶりの優勝の感覚を味わったと話していました。
今回の優勝スピーチでは
「お正月に親戚の子どもから、わたしはアマチュアゴルファーだと思っていたと言われて、複雑な気持ちだった」
と言って笑わせてくれました。
参加してくれたシニアの選手たちも久しぶりの再会を喜ぶとともに、真剣勝負の緊張にワクワクしていたようです。
私はイベント開催の準備やコースセッティング、運営進行から選手紹介や表彰式の司会まで「手作りトーナメント」の裏方側を経験したことで、クラブを振ってボールを打っているほうが気が楽ということを身に染みてわかるいい機会になりました。
まずわたしが心掛けたのは、大会を第1回とか数字で表さないように気を配ったことです。
今年の大会の正式名称は「美浜インビテーショナルレジェンズ岡本綾子カップ2024」であって、回数は明記されていません。
ひょっとしたら、すぐに終わってしまうかもしれないでしょ(笑)。
それは冗談ですが「今大会の開催に全力を尽くす」という意味合いがこもっています。
スタッフのみなさんもその心意気に賛同してくれました。
あとトーナメントでプレーするだけでなく、翌日にはプロアマを開催してチャリティ。
別日には、地元の小学校でスナッグゴルフを体験学習する授業に女子プロを指導スタッフとして派遣するなど、社会奉仕活動に貢献してもいます。
手作りとはいえ、こうした活動はわたしたちプレーヤーだけではできません。
あらためて協賛をいただいたスポンサーの方々や関係者のみなさまに深く感謝の意を表します。
ほんとうにありがとうございました。
無事に終えられてホッとすると同時に、ほんとうにスポーツっていいなと感じました。
特に、こうした手作りのイベントだったことを逆に誇らしくも思えました。
マスメディアによって世間の大注目を浴びるイベントでもありませんが、それだけに巨額のお金が渦巻くビッグビジネスとも無縁。
今どき珍しい善意とボランティアで成り立つ純粋なスポーツ大会に近いような気がしました。
前向きで元気が湧いてくるよう話題で盛り上がりたいものです。
ちなみにある選手が
「トーナメントからしばらく離れていたけど、久しぶりに1ストロークに対する悔しさや満足感といったヒリヒリするような気持ちがよみがえりました!」
と言っていました。
その言葉を聞けただけで、今大会を開催した裏方として、そしてプロとしてうれしく感じ考えさせられました。
「イベントもゴルフも目の前にある“今”に全力で集中です」
週刊ゴルフダイジェスト2024年4月30日号より
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