【浦ゼミナール】Vol.11 理想の軌道はアウトサイドイン? インサイドアウト?
身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。万年スライスのアマチュアにとってはスウィング軌道をどうするべきかは悩みの種。やっぱりインサイドアウトじゃないと飛ばせないの?
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroyuki Tanaka THANKS/√dゴルフアカデミー
浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰
クラブが行きと帰りで
同じ道を通ってほしい
――浦さんはスウィング軌道についてどう考えていますか? やっぱり飛ばすにはインサイドアウトがいいんでしょうか?
浦 いいんですか、こんなテ—マをそんなに簡単に聞いて(笑)。軌道って、僕が生きて来たなかで多分いちばん考え抜いたテーマですから長くなりますよ。まあ結論から言うと「どっちでもいい」んですけど。
――本当ですか? 飛ばすには「インサイドアウトでドロー」ってよく言いますよね。
浦 インサイドアウトもアウトサイドインも、どっちが飛ぶなんてことはないですよ。ただ、インサイドからヘッドを入れてフェースを閉じながら打つドローのほうがロフトが立ちながらのインパクトになるぶんエネルギー効率がよくなりやすいってだけの話です。でももう1つ誤解を解いておかないといけませんね。ここで言っているのは、体の向きに対するクラブの軌道です。ターゲットに対して軌道がインサイドアウトやアウトサイドインだったら、そりゃあ球は散りますよ。ボールの前後30センチのゾ—ンでクラブを夕—ゲットにスクエアに動かすっていうのは、真っすぐ飛ばすための鉄則です。この話は、後で詳しく説明しますが、その前に押さえておきたいのがスウィングプレーン。僕はバックスウィングとダウンスウィングが同じ道を通ってくる1プレーンが理想だと考えています。
行きと帰りが同じルートを通るのがいちばん効率がいい
飛球線後方から見て、ボール位置と首の付け根を結んだ線上を、バックスウィングでもダウンスウィングでもクラブヘッドが通るのが理想。もちろん番手によってこの軌道の傾きは異なる
――プロゴルファーには、バックスウィングは外に上げて切り返しでループしてインから下ろしてくる選手が多いですよね?
浦 はい。その辺は体に染みついているものですし、ループしていても大きな問題はないんですが、あくまで理想としては1プレーンのほうが効率がいいということ。金づちで壁に釘を打ちつけるときに、わざわざ金づちの軌道をループさせます? ゴルフスウィングもボールを横からひっぱたく動きなので、考え方は一緒。とくに、バックスウィングの反動を使ってダウンスウィングでスピードを出すには、1プレーンが絶対に効率がいい。
波打つ軌道は効率が悪い!
バックスウィングとダウンスウィングでクラブの「通り道」が変わってしまうのはエネルギー効率が悪い
浦 スウィング軌道は1枚の板。ただし地面に対して斜めの板なので、その面に沿ってクラブを振るには重力に逆らわなければなりません。スウィング中はつねにヘッドの重さぶん下方向への負荷がかかっているので、腕はそれに負けないようにテンションをかけ続けなきゃならない。このさじ加減がむずかしいんです。
クラブの重さに耐え続ける意識が必要
スウィング軌道は傾いているので、スウィング中はつねにクラブの重さぶんの下方向への負荷がかかっている。この重さを支える右手、左手そして両手の感覚を知っておかなければオンプレーンで振ることはできない
自分の自然な軌道を
真っすぐに向ける
浦 さっきちょっと出た軌道の向きの話に戻るんですが、体に対してインサイドアウトがいいかアウトサイドインがいいかは、自分がどっちが力を出しやすいかで決めるべきです。
――力を出しやすいほうなんて、あるんですか?
浦 はい。人それぞれ骨格やスポーツ歴や筋力の特性なんかで力を出しやすい軌道は違います。それを生かすことが飛ばしの秘訣です。ヘッドのついていない棒なんかを思い切り振ると、「ビュン」と音がしますよね。この音がいちばん大きく出るスウィングがいちばん力が入るスウィングですから、そのときの軌道の向きが自分にとってのナチュラルな軌道なんです。その軌道がわかったら、そのまま振ってインパクトゾーンがターゲットに対してスクエアになるように自分の向きを変えればいい。体の向きを変えずに、自分の動作で軌道をスクエアにしようとするからおかしなことになるんです。
自分にとっていちばんスピードが出る軌道を知る
筋力やスポーツ歴などで、人それぞれ力を出しやすい軌道は異なる。ヘッドのついていない軽い棒などを全力でスウィングして、いちばん大きく「ビュン!」という音が鳴らせる軌道が、自分にとっていちばん力を出しやすい軌道だ。通常のクラブよりも軽くて音の鳴りやすい細い棒を振ってテストしてみよう
――なるほど! 自分が気持ちよく振ったときにターゲットに対して軌道が真っすぐになるように構えるってことですね。でもこれって、どうやって真っすぐかどうかチェックするんですか?
浦 下の画像にあるように、打つボールの周りに4個ボールを置いてスウィングして、真ん中のボールだけ打てれば軌道は真っすぐってことです。僕だと前後2.5センチくらいのマージンがあればスウィングできますが、アマチュアの人は危ないのでもうちょっと間隔を開けてやってくださいね。これにヘッドが当たらないのに球が曲がる場合はフェースの向きが悪いので、真っすぐ飛ぶフェース向きを見つけてください。
「どう立てば当たらず振れるか」自分のスクエアを見つけよう
ボールの周囲に4つのボールを並べ、「いちばん力を出せる位置」で振ったときに、ボールにヘッドが当たらない向きを見つけよう。球が曲がるときはフェースの向きを調整する
フルスウィングしてくださいね!
「ボールの前後30cmを真っすぐにすることが大事」
ボールの右1/4だけ見つめて叩こう
ポイントはボールのフェースに当たる面だけを見てスウィングすること。ボールの3/4を塗りつぶして練習してみるとイメージが沸く
――シンプルですね。
浦 そうですよ。シンプルなんです。みんな自分で軌道をあれこれやって真っすぐに振ろうとするから難しい。自分のナチュラルなスウィングが真っすぐになるように向きを変えるだけでいいのに、最初から「真っすぐ立って真っすぐ振る」なんてことをしようとしたら、そりゃあ、難しいですよ。帝王ジャック・ニクラスを見てください。彼なんて100%インサイドアウトの人です。それが真っすぐになるようにスタンスがオープンなんです。
――この練習は、どの番手でやればいいでしょうか。
浦 本当は、全番手でやってほしいですね。みんな「番手ごとの素振り」ってやらないでしょ? 番手によって重さも長さも違うんだから、同じ素振りじゃダメなのに。それを毎日やっていると、自分のスウィングがわかってきますよ。長い番手はこうなるんだとか、クラブが重くなるほどこうなるなとか。でも練習量が週1回の人は、1本でいいですよ。ミドルアイアンくらいでまずは基準を作ってください。
月刊ゴルフダイジェスト2020年12月号より