【浦ゼミナール】Vol.1「飛ばしたければグリップは“指だけ”で握る! インターロッキングは飛ばしには向かないんです」
指導を受けたアマチュアがベストスコアや最高飛距離を続々と更新しているという浦大輔のゴルフ理論をお届けする「浦ゼミナール」。第1回は、スウィングの基本中の基本、グリップについて。
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/√dゴルフアカデミー
浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰
――浦プロは、都内でレッスンをする傍ら、YouTubeでもご自身のスウィング理論をどんどん発信されています。そこでは従来の「定説」を真っ向から否定するようなちょっと過激な内容も多く見られますが、この連載ではその真意を掘り下けてお聞きしていきたいと思います。
浦 はい、よろしくお願いします。僕自身としては全然過激でも奇抜でもないと思っているんですけどね。たしかに従来のレッスン用語を否定することもありますが、それは従来の表現が誤解を招きやすかったり、ゴルフ用語独特の伝わりにくい言い方をしているのを訂正したいだけなんです。また、プロゴルファーの感覚的な表現やアマチュアを矯正するための過剰な表現だけが先行した結果、バイオメカニクスや物理などの「科学」に照らし合わせると明らかにおかしい表現がされていることも多いので、そういう部分を訂正することも多いからでしょう。
さらに、トッププレーヤーの説明には、自分自身がやっていることを正確に表現できていないケースも多いんです。プレ—ヤ—自身は、レッスンが仕事ではないし、自分ができていれば何の問題もないのでそれでもいい。でもそれを雑誌のレッスンで「どうやってるんですか?」と取材すると、本人は「こんな感じ」と答える。でも実際はそうは動いていないから、アマチュアが真似すると変なことになる。
――雑誌を作っている側の人間としては、耳が痛い話です。
浦 でもプロは実際にそう言ったんですから、嘘ではないですよね(笑)。いずれにせよ僕の否定的な表現の多くはそういうところに真意があるので、この連載ではそこを細かく掘り下げて、アマチュアの方々の疑問を解決できるようなものにしていきたいと思っています。
力が入るのは
フィンガーグリップ
――早速ですが、第1回はグリップについて教えてください。
浦 グリップはスウィングの基本中の基本ですので、そんなに過激なことは言えませんよ(笑)。
――ちょっと残念な気も(笑)
浦 アハハ。まず一般的なショットに関して言えば、グリップは「指」、つまりフィンガーグリップで握ることがとても大事です。飛ばしたいなら、これは絶対的な条件と言っていいと思います。
――それはなぜですか?
浦 すごく単純な話。モノを握るときに、手のひらと指、どっちで持ったほうが力が入るかということです。力が入る握り方のほうが、クラブを速く振れるのは当たり前です。
――ですが、グリップを強く握ってはダメというのは、ゴルフのレッスンでは常識ですよね。
浦 カんでギューッと握るのと正しく力を入れるのは、全然違うこと。野球のピッチャーのボールの握りを見てください。手のひらがボールにペッタリつくように握っている投手なんていません。みんな指でボールを握って投げますよね。しかも、速い球を投げるのにはかなりの握力が必要で、速球を投げるときにボールをゆるく持っている人なんていないと思います。でも、この状態がいちばん腕を速く振れて、いちばん速いボールが投げられる。ゴルフのスウィングもこれと同じことなんです。
指と手のひら、どっちが力が入りますか?
ゴルフクラブという「細い棒」を握って速く振ろうとするとき、指で握る(左上)のと手のひらで握る(左下)のでは、どちらが力が入りやすく速く振れるかは明白。飛ばしたければフィンガーグリップで握るべきだ。
野球のピッチャーもボールを手のひらでは持たず、指を使って持つ。このほうが腕を速く振れ、速い球が投げられるからだ
両手の感覚を詰めて
しっかり握ろう
――力加減はどのくらいですか?
浦 力加減は次回細かく説明しますが、とりあえず左手の小指、薬指、中指の3本と、右手の中指、薬指。この5本はかなりしっかり握ってほしいですね。
――わかりました。では握りの形はどうしたらいいでしょう。
浦 僕はあまり形自体にはこだわらないんですが、インターロッキングはおすすめしません。
――えっ? タイガーも石川遼も、インターロッキングですよ?
浦 インターロッキングではダメというわけではなく、インターロッキングで握るとパームグリップになりやすいから危険なんです。アマチュアでインターロッキングで握る人のほとんどは、左手の人差し指と右手の小指を深く絡めます。これだとフィンガーで握れません。逆に言えば、フィンガーで握れるならインターロッキングだろうがテンフィンガ―だろうが構いません。
インターロッキングはパームになりやすい
インターロッキンググリップは、右手小指と左手人差し指を深く握ったほうがピッタリ収まりやすいため、パームになりがちなので注意が必要だ
両手の指を深く絡めてギュッと握り込んだら、パームにならざるを得ない
浦 それより大事にしてほしいのは両手の親指の位置。左手はショートサムにしてほしい。ロングサムにするとパームになってしまいますから。そして右手の親指は、グリップの上に乗せず、左にズラした位置に添えること。これによって、トップで右手の親指と人差し指のいわゆる「V字」の部分にクラブが乗る形が作れます。この形が大事なんです。
――力まずにしっかりクラブを支えられる形ということですね。これなら必要以上にオーバースウィングになったり、手打ちになりにくい。
親指と人差し指の間にトップでクラブが乗る形
右手グリップの人差し指と親指でできる「V字」は、トップでクラブを支える台座となる部分。そのためには右手親指はグリップの真上ではなく左側にズラした位置に収まり、かつ「V字」部分に締まりがあることが重要だ
トップでは右手の「V字」部分が下からクラブを支えることで安定したポジションに収まる
浦 それともうひとつ。飛ばしたいなら左右の手の間隔を詰めて握ること。両手が近づけば近づくほど、支点と力点が近くなるのでヘッドスピードは速くなります。これも逆に考えれば、飛ばしたくないアプローチなどではパームで、両手の間隔を開き気味にすればいいということでもあります。グリップも、仕組みを知ってしまえば“ツール”になるんです。ちゃんと自分の意図がこもった握りをすることが大事ですよ。
「飛ばしたくない」ウェッジは
太いグリップをパームで握る
飛ばしたいならフィンガーで短く握る。 反対に飛ばしたくないならパームで長く握ればいい。 つまりアプローチなどではパームのロングサムで握り、両手の間隔も開き気味に握るのがポイント。グリップも太めがおすすめ
月刊ゴルフダイジェスト2020年2月号より