【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.794「世界へ羽ばたける素地が整った今、日本女子ゴルフ界はもっと発展するはずです」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
今年もあっという間にシーズンが終わり女子プロゴルフ界は相変わらず盛況でしたが、岡本さんはどうご覧になりましたか?(匿名希望・67歳・HC12)
賞金獲得額ではなく、メルセデスポイントに切り替わってから2回目のシード権争い。
ゴルフファンのみなさんもポイントによる女王の座争奪戦に少し慣れてきたでしょうか。
通常のトーナメントとメジャーなどの公式戦では、出場資格やコース設定が違い、歴史などによって大会の格式も変わってきます。
試合でも3日間と4日間の大会とでは、戦いの厳しさには違いが出てきます。
ポイントは、そういった各大会間のレベル差を勘案して統一的に区分し、成績に応じて配分されています。
トーナメントの賞金額はスポンサー企業の意向で決められますから、出場選手数や大会規模は同じでも、優勝したプレーヤーが受け取る賞金は各大会によって変わってきます。
そのため、賞金額の大きな試合で2位だった選手の獲得した賞金が、別の試合の優勝賞金より高額ということもあり得ます。
これでは、どのプレーヤーが一番優秀なのか、強かったかを獲得賞金額だけで比べるには無理があるため、登場したのが、各大会ごとに割り振ったポイントで争うランキング制度です。
USLPGAツアーでは、2021年からポイントが導入され、日本も翌年から採用。
それまで長い間、各年度を通じて争われてきた賞金レースは、ポイント1位を目指す戦いに変わりました。
また、悪天候などで大会の日程が短縮された場合、ランキングに参入する賞金額は減額される規定がありましたが、ポイント制ではこの影響は受けません。
そのことも、従来の賞金レースで見られた不公平を正すことになりました。
とはいえ、賞金額にせよポイントにせよ、最後に境界線が引かれるのは同じです。
選手たちはいずれにしても、目の前のプレーに集中して全力を尽くす以外にありません。
ランキング上位選手だけで争うシーズン最終戦は、1年かけた長い戦いの決着がつく大一番です。
ですが、最終戦を控えたひとつ前の大会には、それとは一味違うもうひとつのドラマがあります。
わたしは、シーズン最終盤に行われる「大王製紙エリエールレディスオープン」の解説を担当させていただいているので、最後のチャンスで思うようなプレーができずわずかな賞金差で来季のシード権を逃す“悲劇の”選手たちの姿をこれまで幾度となく見てきました。
この手の明暗は、何度見ても胸が締め付けられるような思いがします。
その結果、今年はシード選手としてプレーしてきた中から14人の選手がポイントランキング50位内から漏れるいわゆるシード落ちです。
2024年シーズンのシード権を得た51人(ランク外ツアー優勝者・小滝水音を含む)の平均年齢は、26.1歳で、統計を取り始めて以来の史上最年少。
入る人が若くなれば、競い合いからこぼれる人も若くなるのは道理でしょう。
今回シードを失った14選手の平均年齢も27.6歳で、どちらも20代の若手ばかりという様相を呈してきていると言えます。
シード選手を見ると、最年長である41歳の全美貞選手のほか、30代は申ジエ、青木瀬令奈、穴井詩、菊地絵理香、上田桃子、福田真未、藤田さいき、イ・ミニョン、笠りつ子の9人です。
低年齢化は驚くばかりですが、19歳で4勝を挙げた櫻井心那選手やルーキーで日本女子プロに優勝した神谷そら選手など初シードを手にしたのは11人。
このうち7人が今世紀生まれの22歳以下だそうです。
まずは国内から歩みを始める新人選手たちにとって、フェアなポイント制レースは、またとない励みになるはず。
さらに昨年から日本の下部ツアー「ステップ・アップ・ツアー」もロレックスポイントの対象に加えられたことも大きな発奮材料になっています。
ロレックスポイントは各海外メジャーの出場資格にも組み込まれているため、日本国内だけの成績でも海外挑戦への門戸が大きく開いた感があります。
そして、海外メジャーでの成績に応じて与えられるポイントは、国内ツアーに加算されることになったため、世界への挑戦がしやすくなったのも確かです。
今年の全米と全英の両女子オープンに史上最多の日本勢が挑戦したのは、その影響があるでしょうし、この傾向は今後も続くことでしょう。
ますますグローバル化が進み、新しい力が続々と現れる日本女子プロゴルフ界。
彼女たちの目がより世界へ向けられることを、わたしは心から願っています。
「思い切りのいい若い選手を見つけると、なんだかワクワクするのは私だけ?!」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年12月19日号より
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