【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.158「“切り返しの間”忘れていませんか?」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Shinji Osawa
プロでもアマチュアでも、ゴルファーは悩みが多いもんです。まあ、いっつも悩んどると言ったほうがいいかもしれません。ラウンドの機会が減る冬場は、そんな常日頃の悩みの解消に努めるという人も多いんでしょう。
この間、同い年でトップアマの友人が「奥田、俺はこの冬はボクシングジムに通おうと思うてんねん」いうから、「突然何でや」と聞くと「いや最近、ちょっと距離が落ちてきたしな、瞬発力や」いうことでした。
僕は知らなかったんですが、稲見萌寧選手が、3年前のオフからキックボクシングを取り入れたトレーニングをしているそうです。
まあ彼女は若いですからね。まだ20代前半。若いうちは、そうやっていろんなことに挑戦するのはいいことやと思います。でもね、僕の友達は今年、63歳でっせ。それで僕に、「オマエもやったほうがいいと思うで」と言ってきたから、「俺はそれはせんわ」と言うときました。
稲見萌寧さんはこの1年間で4回スウィング改造したと言うてたそうですが、それは見たらわかります。スウィングの全体像は大きくは変わっていないけれど、切り返しの時間がすごい短くなってきている時期がありましたから。
彼女は多分、飛距離が欲しかったんやと思いますけど、一時、テークバックの「ヨーイドン!」からクラブがいきなり行って返ってくるようなリズムになっているように見えました。それで夏頃は、「あれじゃ球は散るだろうなぁ」と思って見ていたんです。それがここ最近にきて、トップでちょっと“間”ができてきていますよね。
僕らからすれば今くらいで(トップでの切り返しの“間”のタイミングは)ギリギリの感じなんです。辛口で言うと、ですよ。でも、そのちょっとした“間”ができた思ったら、こないだ(TOTOジャパンクラシックで)勝ちましたから。
稲見さんはキックボクシングの効果について、腰のキレと瞬発力と言っとるそうなので、僕の友人もこの冬にボクシングを始めて果たして瞬発力がアップして飛距離が出るようになるかどうか、ちょっと見守ってみようと思ってます。
「アメリカに参戦するそうですね。若い頃の挑戦は楽しみですわ」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年12月19日号より