【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.156「持たないからヘッドは落ちる」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Nasaaki Nishimoto
この前、ある試合でエビ(海老原清治)さんと回ったとき、17番のパー3でティーショットを2人ともエプロンにショートして、2打目はピンまで12~13ヤードのアプローチ合戦になりまして。
これが綺麗に刈った逆目の、いかにもザックリしそうなライでね。エビさんが先やったんですけど、花道やから転がしていける場面で、見ておると思い切りガッ、ガッと素振りしているので、「こらエビさん、ダルマ落としみたいな球でキュキュッとくるんかな」と思ったら、なんとザックリですわ。朝からアプローチ練習でも気色悪そうにやってはったから、(ケガの)手術明けであまりゴルフやってないんかなあ思いました。
次に僕がグリップをゆるくしてヘッドの重みだけで打ったら、それが入ってチップインバーディ。エビさんとハイタッチして、「おまえ上手いなぁ」って褒めてくれてね。
翌日に、エビさんから「あれ、どうやって打ってんの?」と聞かれたから、「前にエビさんから教えてもろたヘッドの重みでポンと落とす打ち方でやってます。エビさんの我孫子流とはちょっと違うかもしれんけど、うちの流儀もそうですから」と答えました。
それでエビさん、帰ってからやってみたんでしょうね。「重みで打つっていうのはイイよな。ありがとう」いうメールが来ました。
アプローチでへッドを落とすように打つと、ザックリやトップする人が多くいてます。これは、クラブを自分が持って上げているのが原因で、クラブを持ってなかったらヘッドは重みで落ちるんです。
どういうことかというと、たとえばスプーンを最小限度の力で持って上へ上げて、そのままその力を抜くとトンとスプーンは重みで落ちます。これが「持っていない」イメージです。
クラブも、ゆる~く握って限りなく0に近い力で上げていくと、ヘッドは重いので自然に落下します。クラブの寸法は変わらんのやから、構えたところに戻りボールに当たります。
でもトンカチみたいにけっこうな力で握って持ち上げたら、自分の力を使ってクラブを落とさなあかんので、軌道がズレる。アプローチでダフるとかトップするのは、ほぼこれと同じ原理です。
「ゆる~く握って力を0で上げれば、ヘッドは自然に落下します」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年12月5日号より