Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 月刊GD
  • 【陳さんとまわろう!】Vol.244 トップ選手のスウィングを頭の中に焼き付けて、一生懸命再現するようにしてました

【陳さんとまわろう!】Vol.244 トップ選手のスウィングを頭の中に焼き付けて、一生懸命再現するようにしてました

スウィング動画を、今のように気軽に撮ったり、見たりできなくても、陳さんのスウィング分析は凄かったのだ。

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

前回のお話はこちら

試合で、世界の
トッププロのスウィングを
見て勉強しました

――陳さんが初出場した1956年のウェントワースのワールドカップでベン・ホーガンが低い弾道のボールを打つのを見てびっくりしたという話の続き。

陳さん はい。高いボールはいくらでも打てますけど、低いボールは技が必要になりますからプロでもなかなか打てないんだねえ。それでなぜ低いボールが打てるのか考えたわけ。でもわからないよ。私はプロの世界では未熟だし、とても分析なんかできないじゃない。でもウェントワースの次の東京大会で世界中のトッププロのスウィングを見て、また次の年のメキシコ大会で再びホーガンのスウィングをチェックしてそれがわかったんだ。

――ホーガンは東京大会には出なかったんでしたね。


陳さん そうなの。ホーガンは飛行機嫌いで有名で、東京まで10時間以上も飛行機に乗るのはイヤだってことだったらしいよ。だから近いメキシコには出たわけね。

――ではなぜホーガンが低い弾道のボールを打てるのか、陳さんの分析した結果は?

陳さん 低いボールと同時に、ボールを目標に正確に打てる分析だね。それはボールを打つまで腰を回さないということなんですよ。バックスウィングでは右足に体重を乗せるだけだし、インパクトまでも腰を左にスライドさせるだけなんだねえ。バックスウィングで腰を右に回し、ダウンスウィングで左に回すという当時の日本のトッププロがやっていた腰の動きとは全然違う動きをやっていたことがわかったわけね。それで、なるほどと思って。

――そのころは陳さんも相当目利きができるようになっていた。

陳さん はい。勉強したからね。世界のトッププロのスウィングを見て、頭の中にそれを焼き付けて。台湾に帰ってからは頭の中にスウィング映像を浮かべながら一生懸命再現するようなことをやったわけ。スウィングリズムとか、トップオブスウィングからどのようにクラブを下ろしてくるかとか。手首の使い方もやってみたし、気が付いたことをいろいろやりました。

――その勉強熱心さがメキシコ大会のときの個人戦10位に結び付くわけですね。

陳さん ホーガンとは3日間同じスコアで回ったのよ。72、73、72でね。でも4日目に私が76を叩いて、74で回ったホーガンに負けました。しかし私も世界一の選手ホーガンに2打差まで迫ったんですから上手くなったもんでしょ(笑)。

――確かに。

陳さん ホーガンがやっている腰のスライドが低いボールと正確なショットを生むことを確信したのは、その後自分がやってみて同じ結果が得られたからだね。バックスウィングで腰を右に回すと、クラブがインサイドに入りすぎるし、ダウンスウィングで左に腰を回すとアウトサイドインにクラブが振り下ろされるんだ。しかし腰をスライドさせるとそれがなくなるんだねえ。だからショットが正確になるわけよ。それからダウンスウィングで腰を左にスライドさせることでハンドファーストのインパクトが可能になるの。これは低いボールを打つために一番大事なポイントですからね。ハンドファーストによってクラブのロフトが立つんだ。実際、私が59年の日本オープンに優勝できたのは、この技術のおかげなんですよ。

陳清波

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2024年1月号より