【ゴルフ野性塾】Vol.1785「直ドラには左足上りのいいライが要る」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
現在時5月31日。
午前7時35分。
本稿、旅の途中の執筆。
雨が降っている。
雨降れば窓の外、暗くなる。
プロゴルファーの習性なのかと思うが気持ちも暗くなる。
私は晴れ男を自認し、女房も認めて来た。
長男雅樹も晴れ男じゃある。
梅雨に入ったと聞く。
体調良好です。
それでは来週。
0.5インチ短く持って打て。
女子プロが直ドラで2オンを狙っているのを見ました。上手く打てれば、スプーンよりも強く、ランが出る弾道で距離を稼げると思いますが、ダフったり、地を這うような球になったり、まともな当たりが出ません。直ドラはアマチュアには無理なのでしょうか。使いこなすコツがあれば教えてください。(大阪府・佐藤琉弥・45歳・ゴルフ歴12年・平均スコア90)
建前事や綺麗事で申せば貴兄の挑戦、否定はしない。
直ドラで打つ条件は二つ。
一は左足上り、二はボールが浮いている状態である事。
貴兄の技量はハンディ16前後と推察する。
左足上りであれば余程のインパクト癖を持つスウィングでない限り、インパクト直前のドライバーロフトは15度にはなる。
であれば3Wに近いインパクトとなり、3W得意の方ならばフィニッシュ型崩さぬ限り、直ドラの成功確率は30%を超えよう。
直ドラにはフィニッシュ型の維持が必要。
フィニッシュ型、崩さなければヘッド軌道は安定する。
私はジュニア塾生に強く命じた。
「フィニッシュを崩すな。フィニッシュさえ決めておけば一度のミスは生じようと二度目のミスの確率は低まり、三回連続のミスの確率はもっと低くなって行くものだ。
成功の確率上げるよりは失敗の確率下げて行くが上達の秘訣。
皆、そこを勘違いしてる。
成功の確率、いい球打てる確率を求めている。
練習は成功の確率高めるよりも失敗の確率下げる球叩きが最善。
成功の確率、求めるは次善の努力。
そして、次善の努力は遠回り、結果を見ても遠回りだ。
失敗の確率下げる練習は近回り。
いい球打つよりもミス球打たぬ練習をせよ。
失敗の確率下げる練習は成功の確率高める練習より退屈であり、平凡と思うが、その平凡こそが上達最短の道なのだ。
いい球打とうとすれば球一球の練習、粗末になる事は多い。
球一球と球一球への努力、粗末にしたくなければミスせぬスウィングと失敗嫌う意識を持て。
プロになり、ツアーで成功した者はいいい球打つ練習はしない。失敗の確率下げる練習をする。
いい球打つ練習は近い目標であり、近い道だ。
失敗の確率下げる練習は遠い目標であり遠い道と思うが、プロテストに通り、ツアー参戦し、ツアーで成功するには遠い目標が要る。
努力、克己必要としない夢は見るな。努力と己の安易さと戦う夢を持て。
人の世、いい事、楽しい事ばかりが浮いている世じゃない。
辛い事、楽しい事も浮いているのが人の世だ。
いい事、楽しい事、辛い事、悲しい事、それぞれが浮き沈みするのが人の世と思う」
小学生には語らなかった。
プロを目指す気持ち、強く持つ中学生高校生に語って来た。
どの業界に於ても超一流を目指すは簡単、安易ではないと思う。
成功した時の前後の安易さはあっても勝てなくなった時は辛いばかりだ。
人それぞれの生き様、過し様なれど、思い通り願い通り、計画通り予測通りには行かぬが人の世の稽古事、鍛錬事、継続事、戦い事と思う。
ただ、その業界に10人といない超一流は別物。思い通りに過し、生きて行く事は出来る。
超一流を目指せばいい。
誰もが願う超一流。目指す気持ちと姿勢に垣根はない。玄関も裏口もない。
そして結果は年月が教える。
貴兄は左足上り、球浮くライであれば直ドラ打てる方と思う。
ドライバーの握り、0.5インチ短く持てばいい。
そして、アドレス時の少しのクラブフェース閉じ。バックスウィング、閉じて上げれば反動でバックスウィング途中でクラブフェースは開く。
ならばアドレス時からフェース開いておけばいいの考え様もあるが、開いて上げればクラブヘッドが寝た状態になる。
トップスウィング時、シャフト位置がフラットだとインパクト時のヘッドロフトは10度前後になる。
それでは如何に左足上りライであっても球浮かす事は出来ぬ。
プロテストに通って2年後、私は鹿沼CCから九州福岡の周防灘CCへ移籍した。
鹿沼より長いコースだった。
左右OBのパー5が2ホールあり、高い球を打てば風の影響を受けた。
ティーショットも第二打も低い球を打たねばならぬ山岳林間コースだった。
パー4のティーショットポジションは狭く、18ホール中8ホールの左右OBへの警戒心は必要だった。
向い風、2オン出来ぬミドルホールが3ホールあった。
第二打地点、2ホールはフラットライで直ドラ打てたが1ホールは左足下りのライであり、直ドラ使うのは難しかった。
鹿沼の週休日は北5番のフェアウェイサイドのバンカーからロングアイアンの練習したが、周防灘では4番ホールの左足下りのライから直ドラの練習をした。
私は失敗しない確率求めて直ドラ練習に入った。
最初の1カ月、キャリー50ヤードの球しか打てなかった。
1カ月3カ月と過ぎ、キャリー距離は伸びた。
己の上達を教えてくれる直ドラのキャリー距離だった。
練習始めて10カ月、キャリー230ヤードの直ドラが打てた。
トップ位置を高くすればフィニッシュ位置は低くなる。
フィニッシュ位置を高くすればトップ位置は低くなる。
トップとフィニッシュを高くするのは簡単な様で意外と難しかった。
トップ型とフィニッシュ型を繋ぐのがスウィングである。
位置が必要だった。
フラット打ち、横殴り打ちだと左足下りの球は打てない。
芯捉えするのも難しくなる。
トップとフィニッシュ位置をこぶし半分高くして、トップ時の左手甲を外に張る意識で打った時、ミスの確率は低まった。
結果はキャリー距離不足でもミスとは言えない球が打てたのです。
いい球を打とうとしたら10カ月でキャリー230ヤードに達するは困難だったと思う。
私は24歳でゴルフを始め、27歳でプロテストに通り、翌年からツアー参戦したが、今、想うにゴルフ始めてからの7年間が最も研鑽出来た時だった。
7年過ぎて私は緩んだ。
そして現在、緩みっ放しの時を過す。
結論を申すと、直ドラで打つにはボールのライの条件が要る。
ならばロフト立つ3Wの購入を勧める。それが最善だ。
直ドラの与える球質は金で買える。
貴兄の技量でフラットライと左足下がりのライからの直ドラ打ちは無理だと思う。
金を使え。
それがイヤなら諦めを勧める。
しかし、ハンディ16の方に直ドラ必要なのか。
ゴルフの難しさは己の心の中、己の欲の中に在りか。
以上です。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2023年6月20日号より