【名手の名言】バイロン・ネルソン「名プレーヤーは皆“2つのC”を習得している」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は、ベン・ホーガン、サム・スニードとともに「ビッグスリー」として時代をリードしたバイロン・ネルソンの含蓄のある言葉を2つご紹介!
偉大なプレーヤーは皆
2つの“C”を習得してきた。
いかに集中するか(Concentration)
いかに平静を保つか(Composure)
バイロン・ネルソン
ネルソンには、未来永劫破られないであろう記録がある。
1945年に打ち立てた「ツアー11連勝」の記録。このときには年間18勝、勝率6割、平均ストローク、120ラウンドで68.33という驚異的なデータも残している。113試合連続予選通過の記録も保持していたが、これは2003年、タイガー・ウッズによって破られた。
この11連勝を支えたのが、冒頭にある「2つのC」――集中(Concentration)と平静(Composure)。
ゴルフは18ホール、4~5時間という長い時間を戦う競技。しかし実際に球を打つ時間は一瞬であり、集中力のオンとオフの切り替えが重要になる。
また、ゴルフは「ミスのスポーツ」と呼ばれるように、トッププロでさえ、完璧なショットというものは1ラウンドでも数回程度。ほとんどのショットが、多かれ少なかれミスショットであるため、そのたびに腹を立てていては18ホールもたない。
つまり、いかに1打1打に集中し、かつその結果に一喜一憂せずに次のショットに向かえるか。これこそが、一流プレーヤーに求められる資質というわけだ。
真のナイスショットとは
最大の危機において
しかもそれが最も必要とされるときに
打てるショットだ
バイロン・ネルソン
「ナイスショット」の要件は人によって異なる。
アベレージゴルファーにとっては、ドライバーがちゃんと当たってフェアウェイの枠に収まれば十分ナイスショット。チョロやテンプラでも150ヤード先のフェアウェイど真ん中にボールがあれば、全然ナイスショットだ。
レベルが上がってくるにつれ、ナイスショットの範囲は狭くなってくる。傍から見るといい当たりでも、「今のはヒール」「薄かった」「開きが早かった」など、上級者の求めるハードルは高い。良かれと思って言った「ナイスショット」がかえって気分を害してしまうこともあるから要注意だ。
それがバイロン・ネルソンともなると、もはやショットの良しあしを超えている。優勝争いの極限の状況で、1打も落とせない場面で、1mmのミスも許されないシビアなライで、狙ったところにボールを運べるか。練習量に裏打ちされた技術と、それを極限の場面で発揮できる精神力の両方が合致して初めて可能になる1打こそが、ネルソンのいう真のナイスショットというわけだ。
このように見てくると、上手くなればなるほど、自分的「ナイスショット」の割合は減っていくことになる。このあたりが、ゴルフという沼の恐ろしさのゆえんかもしれない。
■バイロン・ネルソン(1912~2006年)
テキサス州フォートワース生まれ。10歳からキャデイを始め、20歳でプロ入り。仲間にはベン・ホーガンがいたが、性格は正反対だったという。その後サム・スニードを加えた3人は、「ビッグスリー」として時代をリードした。1937、42年にマスターズ優勝。39年には全米オープン、全米プロは40、45年の2度優勝している。また45年には前人未踏の11連勝を達成し、年間平均スコア68.33という驚異的数字を残している。引退してからもネルソンに師事するために門を叩くトッププロは多く、長くツアー界の大御所として君臨した。