【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.107「パットが分からなくなったら“感性”に立ち戻ってみてください」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Masaaki Nishimoto
パッティングに悩んでいる人に、まず歩測もボールの線を合わせるんもやめてみたらどうですか、そうすれば感性を生かすことができてようなると思いますよ、とアドバイスさせてもらうことがあります。
歩測や線合わせは、石橋を叩いて渡るときの情報集めと同じで、これは感性に蓋をして周りが見えんようにしてしまいます。トントン叩いて石の脆さや音などの情報集めに気を取られておると、橋が崩れる瞬間を察知できずに落っこちてしまう。
一方で、感覚を研ぎ澄まして橋が崩れる兆候を感じ取ることができれば、落ちることはありません。パッティングも、同じです。
と偉そうなこと言うてますけど、僕でも調子が悪くなると情報を集めたくなるときがあります。
数年前の中日クラウンズで、予選を通ってパターの練習をしとったとき。調子が悪いから、クラブ1本置いて線をつけて練習しとったら、エビさん(海老原清治)に「何やってんの?」と聞かれ、「パターがおかしな動きするからちょっとそろえているんですわ」と言うと、「オマエ馬鹿じゃねえの。思ったところにボールを出すだけでいいんだよ」って。「何だよこのクラブ」はと言うてクラブをよけられました。
また、僕がパターを打つ前にボールとカップの周辺をウロウロするんが気にいらんようで、こちらも「何やってんだよ」と。
実は、僕はパッティングのスライスラインが見にくい傾向があって、目線の取り方なのか、手前から見ると真っすぐに見えたラインも、裏に行くとスライスだったとわかることが多いんです。
それを確認するために裏に行くいう話をしたら、海老さんから「よし。明日から、ティーショットからパターまで1歩もボールより前に出るな」言われたんです。
それで裏からのライン読みも一切やめた結果、次の日は「69」。
その次の週のフジサンケイでは27ホール回って11アンダーでトップです。最終日に何回か裏に行ってライン読んだりしてしまい、最終順位は10位くらいやったですけど、感性の大切さを改めて教わった気がしました。
「忘れがちなことを助言してくれるスゴイ先輩ですわ」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年12月6日号より