【渋野日向子プレス/再録⑦】26試合ぶりの予選落ちも、成長につながる攻めゴルフ。伊藤園レディス
渋野日向子プロのプレーに、みんなのゴルフダイジェストのプロゴルファー・中村修が密着取材した、週刊ゴルフダイジェストの連載企画「しぶこプレス」を再録。第7回目はアクサレディス以来の予選落ちを喫した「伊藤園レディス」をレポート。
千葉県のグレートアイランドクラブで行われた「伊藤園レディス」は、鈴木愛選手の3試合連続優勝で幕を閉じました。
シン・ジエ選手、鈴木愛選手との地力差
渋野選手は26試合ぶりの予選落ち。これにより賞金女王争いで大きく後れを取ることとなってしまいました。
試合後の渋野選手からは、「私 の口から賞金女王と言ってはいけないと思った」と弱気とも思える発言もありましたが、終盤戦のプ レッシャーのなかで優勝を重ねる鈴木選手や、確実に上位に名を連ねるシン・ジエ選手との地力の差が表れる試合となったのも事実。
とくに大会初日は渋野、鈴木、シンという賞金女王争いの上位3人が同組になるペアリング。ものすごい緊迫感のなかでのプレーに、経験豊富な2人との差を身をもって感じたのだと思います。
初日、鈴木、シンの両選手は無理をせずにスコアメークに徹する「安全運転」で4アンダー、3アンダーで回るなか、渋野選手は思い切りのよさやショットのキレ、 飛距離といった数少ない武器を駆 使して奮闘しましたが、スコアを伸ばし切れず1アンダー。
さらに2日目には、ピン位置が少しやさしい設定になったのを逃さず、鈴木選手が5つ、シン選手が7つもスコアを伸ばした一方、渋野選手は波に乗り切れず、イー ブンパーで終わり、カットラインに1打届かずの予選落ちとなってしまいました。
渋野選手はショットのキレも悪くなく、パッティン グも不調から脱してはいたのですが、肝心なところで難しいラインのパットを残して決めきれないなど、流れに乗れず、スコアメークに苦しみました。
象徴的だったのは初日の13番パー5。渋野選手はドライバーで会心の当たりを見せ、2人を30~45ヤード置いていくティショットを放ちます。
しかしそこから、シン選手は135ヤードを、鈴木選手は72ヤードを残すように2打目をレイアップしてバーディを奪ったのに対し、2打目も飛ばして50ヤードにつけた渋野選手はグリーンに乗せられずにパー。マネジメントの差が表れたホールでした。
また2日目の7番ホール、短いパー3でも、そこまで3連続バーディで勢いに乗りかけたところでボギーを打ち、せっかくつかみかけた流れを逃がしてしまいます。
右奥に切られたピンに突っ込みたいところがショートし、そこからのアプローチをオーバーし下りのパットを外す痛恨のミスでした。
背伸びのゴルフをせず、攻撃一辺倒でいく
鈴木選手、シン選手が翌日や最終日のことまで考えたクレバーなプレーでスコアメークをしていくなか、渋野選手はつねにピンを狙い続ける攻撃一辺倒のプレー。
絶好調時ならそれで爆発的なスコアを出せても、シーズンを通してみれば今週のように噛み合わない日もあって当然です。
渋野選手と青木翔コーチは、今後のことを見据えて、あえてマネジメントに頼らないゴルフに徹しているので、勝負どころでこういった取りこぼしが出るのは、ある意味仕方のないこと。
いま背伸びをして目の前のスコアを追いかけたり、できもしない逃げのゴルフをした結果ミスするよりも、攻めに攻めた結果ミスして負けるほうが得るものは大きく、長い目で見たときに必ずプラスになると二人は考えています。私もそれには同意見です。
予選落ちという結果になってしまったことは残念ですが、このシビアな状況下で悔しい思いをしたことは、伸び盛りの渋野選手にとって計り知れない経験になります。
渋野選手からは、賞金女王を目標に掲げたことを悔やむ発言もありましたが、その目標を掲げたからこそ、鈴木選手やシン選手と同じステージに上がることができたのです。
これによって足を踏みいれた「賞金女王争い」という特殊な環境下で生まれる重圧は、それまでの「もう1勝」とか「1億円」といった自分だけの戦いとはまったく次元の違うものです。
この経験が渋野選手のレベルを大きく引き上げてくれることは、間違いありません。
週刊GDより
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