【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.106「“見栄を切る”プレーを見て」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Hiroshi Yatabe
ゴルフ場に足を運んで試合を観戦したり、プロアマなどに出たりして、プロゴルファーのプレーを間近で見る機会があったときに、ぜひ見てほしいもんがあります。
まあ、多くの人はプロゴルファーってすごい球を打つんやなぁと思って、球だけ見て帰るんやろうけど、せっかく間近で見るんですから、プロの所作とか回り方とか、そういうもんを見てほしい思います。
なんや奥田はボールも拭かんと歩測もせんと打つねんな、とか、そういうのを見て真似してもらえたら。
プロアマなんかで見ていると、ほとんどのアマチュアの人は歩測をして、ボールの線を目標に合わせて打ちます。それで3パットしとるんですよ。
あるプロアマでお客さんがまさにソレをしたので、「今、3パットしましたよね。次また測るんですか?」と僕が聞くと、「測る」言うんですわ。そしたら次のホールでまた3パット。「2連続3パットですね。それでもまだ測るんですか?」と聞くと、「じゃあ測るのやめてみるわ」言うので、「ついでにボールの線を合わせずに真っ白のほうを上にしてやってみてはどうですか」言うたんです。
それで距離も測らずに、パッと見ただけで素振りもせずに打つと7メートルのバーディパットが入った。「今は感性で打たれたんじゃないですか」と言うと、あ、そうかという顔をされました。「僕は素振りはしますから、僕の負けですね」言うと笑ってはりましたけどね。
ゴルフっていろんなもんを付け加えて上手くなるんではなく、余計なもんをやめてそぎ落としていくと上手くなるいうもんです。
プロの所作は本来、無駄がないものであるべき。ただ、あまりにも無駄をなくすと、適当にやっておるように見えてしまうし、舞台を見に来てくれているお客さんに対してサラッと終わるんでは盛り上がりも何もない。
そこで歌舞伎の“見栄を切る”ようにお客さんにアピールできる、そんなもんがあればと思うて僕らプロはやっているので、そういうところも、ちょっと見てもらえるといいかな思いますね。
「技術だけやなくて、僕らの所作とか回り方も、見てほしいですね」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年11月29日号より