なぜゴルフの観客は「ギャラリー」と呼ばれる? 日米で異なるファンとの距離感【明日使えるゴルフ用語】
普段当たり前のように使っているゴルフ用語だが、その成り立ちや意味を問われたときに、正しく返せるだろうか? ここではラウンド中の会話やゴルフ仲間とのやりとりで使える、ゴルフ用語にまつわるうんちくを紹介する。
ギャラリー【Gallery】
新型コロナウイルスの流行により、ここ数年、ゴルフのプロツアーでもギャラリーを制限せざるを得ない状況が続いていた。
しかし先日の日本女子オープンでは、実に3シーズンぶりに、観客制限なしで試合が行われ、4日間で2万7271人のギャラリーが会場に足を運んだ。
試合に臨んだプロたちからも「ギャラリーがいるとパワーがもらえる」「プレーも上手くいく」「ギャラリーがいると嬉しい」などの声が多く聞かれ、ギャラリーの重要性を再認識した様子だった。
そんな、ゴルフのトーナメントとは切っても切り離せないギャラリーだが、そもそもなぜ観客のことを「ギャラリー」と呼ぶのか、疑問に思った方もいるのではないだろうか。
スポーツにおいて、観客のことを「ギャラリー」と呼ぶのは、ゴルフとテニスぐらい。野球では「ファン」、サッカーでは「サポーター」、バスケットのBリーグでは「ブースター」など、競技によって呼び名が変わるのは、それぞれのスポーツの特色を表しているようで面白い。
ギャラリーというと、一般的には美術作品などを展示する場所という意味で使われることが多いが、もともとはラテン語で教会のポーチを意味する言葉に由来し、転じて劇場の「天井桟敷」(舞台から最も遠い位置にある観客席)を意味するようになった。
そこから、ゴルフで選手のプレーを遠巻きに見る観衆のことを、ギャラリーと呼ぶようになった、とされている。
たしかにゴルフの観客は選手のプレーを遠くから眺めることが多いが、一方で、選手をとんでもなく近い距離で見られる数少ないスポーツの1つでもある。
ティーイングエリアの最前列で陣取っていれば、目と鼻の先でトッププロの迫力のショットを見ることができるし、セカンド地点で選手が林に打ち込んできた場合、木と木の間を抜くリカバリーショットを目の前で観察することができる。
屋内のスポーツでは、格闘技や相撲など、かなり近い場所で見られる競技もあるが、屋外でこれほど観客との距離が近いスポーツは珍しい。欧州の自転車レースなどでは、上り坂で選手に触ったり(ときに押したり!)するシーンも見られるが、お目当ての選手に会えるのは一瞬。ゴルフでは常に選手を近くで見ることが可能だ。
日米で異なるギャラリーとの距離感
ただ、近いぶん、注意が必要なのが「音」。ゴルフは、選手がプレーに入ったら音を立ててはいけない、というのが不文律のマナー。野球やサッカーのように、常に大音量の声援が飛んでいるスポーツであれば、選手も多少の雑音は気にならないだろうが、沈黙のなか打つのが当たり前のゴルフにおいては、ごくわずかな音でもプレーに影響がある。
お目当ての選手が打ち終わると、まだ他のプレーヤーが打っていないのにぞろぞろと次の地点に移動するギャラリーもいるが、これはマナー違反。ボランティアが掲げる「お静かに」のボードが下げられるまでは、静かにショットを見守るのが見る側に求められる最低限のマナーだ。
最近では試合会場で、スマホで選手のプレーを撮影できるエリアも設けられるようになってきたが、基本的にはコース内での撮影はNG。スマホのシャッター音ぐらい気にするなよ、と思う人もいるかもしれないが、一打一打に生活がかかった選手からすれば、大事な場面で打つ直前にカシャカシャ鳴ったら、少なからず支障があるだろう。
海外の試合では、ギャラリーが当たり前のようにスマホで撮影しているが、海外ではスマホのシャッター音が鳴らないように設定できることもあり、PGAツアーでは数年前からギャラリーによる撮影がOKになっている。ツアー側としても、SNSなどで試合の画像や動画が拡散されることで、認知度のアップにつながるというメリットもある。
また海外の試合では、お酒を飲みながら観戦を楽しむギャラリーも多く、選手サイドの雑音に対する許容度は高いように思われる。このあたりはお国柄の違いもあるが、成功しているツアーに学ぶことはまだまだ多そうだ。