【ゴルフの、ほんとう】Vol.736「優勝候補は“分かりません”と答えざるを得ないほど、女子の層は厚くなっています」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
今年の日本女子プロ選手権最終日の優勝争いは、川﨑春花選手の史上最年少での初優勝もありテレビ観戦していて久しぶりに楽しい内容でした。岡本さんはどうご覧になりましたか?(匿名希望・55歳・HC9)
わたしはこの試合、スカイAによるCS放送の中継で、3日目と最終日のプレー前半戦の解説を担当していました。
ギャラリーを入れての開催は3年ぶりで、選手権の解説をするのは初めてでした。
余談ではありますが、放送前に優勝候補を何人か挙げてほしいと言われ「分かりません」と答えていました。
そうして始まった決勝ラウンド。3日目のラウンドを終えた時点でトップに立っていたのは21歳の山下美夢有プロ。
今年すでに2勝を挙げ、メルセデス・ランクは首位。
初出場で挑んだ8月の全英女子オープンでも、13位タイと健闘したプレーが印象に残っています。
2打差の2位に森田遥プロ、3位に三ヶ島かなプロ、後続にささきしょうこプロなど中堅選手が並びました。
山下プロの逃げ切りを予想した人もいたとは思いますが、最終日4打差の4位タイグループにいた川﨑春花プロが8番パー4で第2打を直接カップインのイーグルで追撃を開始。
インに入って12番から4連続バーディで優勝戦線の主役に躍り出たのでした。
先頭に立った川﨑プロは、自分のプレーを淡々と重ねているように見えました。
連続バーディが始まった3ホール目あたりから、本人は優勝を意識し始めたはずです。
まだツアーに出始めてほんの10試合。そのうち予選通過を果たせたのは4試合のみ。サンデーバックナイン。
緊張するはずですが、彼女は上がり2ホールも連続バーディで締めくくり、見事、初出場初優勝を果たしました。すごいですね!
ドキドキするより自分の快挙にワクワクしていたみたいに見受けられました。
若くて生きのいい選手の勢いを見せつけられました。
ツアー初Vがメジャー優勝というケースは、国内外でも多数ありますが、まさにそういう勢いなのかもしれません。
川﨑春花プロは、2003年生まれの19歳。
昨年11月、高3だった川﨑さんは、地元・京都の城陽CCで行われたプロテストで一発合格を果たしました。
そのときから今回の選手権が同じ舞台で行われることを知り、出場してプレーすることに照準を合わせたと聞いています。
昨年12月のQTファイナルでは結果を出せなかったものの、5月にはステップ・アップ・ツアーで初優勝して、7月に行われた日本女子プロ選手権の予選会から出場権を獲得。
目標を決め、コツコツ達成していくタイプのように見えます。
それにしても19歳の選手権チャンピオンは史上最年少記録です。
このところ、女子プロゴルフ界の世代交代は目まぐるしく、放送前に、優勝候補は分かりませんと答えておいてよかったです(笑)。
選手権の翌週には、住友生命レディース東海クラシックで、川﨑さんと同期の尾関彩美悠プロがツアー初優勝。
こちらも同期の19歳というのですから、前の週の快挙がどれだけ刺激になったかは想像するに余りあります。
今年はすでに、昨年6月のテスト合格で、ツアー初Vから2週連続優勝を飾った岩井千怜プロ(20歳)の例があります。
テストに合格して1年もたたないような選手たちが優勝するなんて、日本の女子プロ界はなんて選手層が厚いのかしらと頼もしく、また、しっかりしたスウィングで伸び伸びプレーしている選手が大勢いて心強くも感じました。
ただ、選手権の進行を外から眺めていて思ったのは、選手たちのプレー進行全体がやや遅いこと。
もうひとつ、グリーン上での自分のプレーが終わると、同伴競技者のプレーを見ず、お構いなく次のホールへ移動してしまう選手が多く、基本的なマナーが軽視されすぎている点が気になりました。
技術はもちろんですが、やはりゴルファーとしてどうあるべきか。このような風潮はやめるようにしていきたいと思いました。
「中堅選手もがんばっているから、見ごたえの深みが出ているのかもしれませんね」(PHOTO/Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2022年10月11日号より