【PGAツアーHOTLINE】Vol.35 アダム・スコット「父との二人三脚でつかんだ栄光」
PGAツアーアジア担当ディレクターのコーリー・ヨシムラさんが米ツアーのホットな情報をお届けする隔週連載「PGAツアーHOTLINE」。第35回のテーマは、アダム・スコットを世界のトップに導いた父の教えについて。
ARRANGE/Mika Kawano PHOTO/Tadashi Anezaki
父との一番の思い出は
マスターズ優勝時の言葉
アダム・スコットはクラブプロである父・フィルさんの手ほどきでゴルフを始め、19歳まで父を唯一のコーチとしてプロもうらやむスウィングの基礎を二人三脚でつくり上げました。
「父の影響は計り知れません。あらゆる面でお手本だったし、アダム・スコットというゴルファーをつくったのは父です。決して強制せず息子の意思を尊重して思うように練習をさせてくれました。ゴルフだけに偏らず人間的なバランスを大切にしながら見守ってくれたのです」
あるがままの自分を認めてくれる父のおかげで健全な成長を遂げたスコットは、高校を卒業する頃にはアマチュアの世界ランク1位の座を獲得していました。卒業後はUNLV(ネバダラスベガス大)に進学しましたが、欧州ツアーに挑戦するため19歳で中退。
彼には当時の強烈な思い出があるそうです。19歳だったスコットはラスベガスでタイガー・ウッズと練習ラウンドをする機会に恵まれました。するとタイガーは赤子の手をひねるようにスコットを一蹴。いとも簡単に63をマークし19歳の青年を圧倒しました。
あまりの実力差に「プロになるのを考え直したほうがいいかも」と、冗談めかして周囲に漏らしたのだとか。
タイガーがペブルビーチの全米オープン(00年)で後続に15打差をつけ歴史的大勝を飾ったのはその直後。
「なんだかホッとしました。自分だけじゃない。誰も彼みたいなプレーはできないんだと思ったら嬉しかった」
欧州ツアーで結果を出し、PGAツアーデビューした翌年(04年)にプレーヤーズ選手権を制した彼はトッププロの仲間入りを果たしました。
もちろんキャリアのクライマックスは13年のマスターズ優勝。父が見守る中、プレーオフを制してオーストラリア人で初めてグリーンジャケットに袖を通したとき、親子は至福の瞬間を味わいました。
10番のグリーン奥で抱き合い、「これ以上の喜びはない」と父に言われたのは、「生涯忘れられない思い出です」と振り返ります。
42歳になった彼にとって10回目のプレジデンツカップ出場となる今大会。終盤戦の活躍で最終的にメンバーに滑り込んだスコットは、必ずやチームの要になるでしょう。
コーリー・ヨシムラ
PGAツアーのアジア全体のマーケティング&コミュニケーションディレクター。米ユタ州ソルトレーク出身でゴルフはHC6の腕前
週刊ゴルフダイジェスト2022年9月20日号より