「苦しかったけど耐え抜いた」ウィル・ザラトリスが悲願の初優勝
たびたびメジャーで優勝争いを演じながら、これまで勝てなかったウィル・ザラトリスが、プレーオフシリーズ第1戦「フェデックスセントジュード選手権」で念願の初優勝を飾った。
初日に86位タイと出遅れ、予選通過も危ぶまれる状況からの猛烈な巻き返し。だが優勝までの道は険しかった。決着はS・ストラカとのプレーオフにもつれ込み、3ホール目の11番パー3でドラマが。ザラトリスのティーショットがグリーンの縁を跳ね、池を囲む平らな石の壁と分厚いラフの間に挟まった。そのまま打てば芝の抵抗でグリーンではなく池に入る危険もある。一方のストラカはティーショットを池に入れ、ドロップエリアからの3打目が奥のバンカーにつかまり4打目で寄せるも、ボギーセーブならず。
前週デビュー以来コンビを組んできたキャディと決別し、新キャディを帯同して挑んでいたザラトリスは、そのままアプローチを打つべきか否かを慎重にキャディと相談し、ドロップエリアからの第3打を選択。それを1ピン強に運び、ボギーで栄冠を手繰り寄せた。待ちに待った瞬間。ザラトリスは「苦しかったけれど耐え抜いた」と感情を爆発させた。
今年だけで2位が3回、トップ10が8回。優勝がないのが不思議なくらいだが、本人はこう言う。
「マスターズ(20年)の2位は人生を変える出来事でした。全米プロでプレーオフまで進んだのは、勝つことが目標ではなかったから十分健闘したと納得できた。全米オープンの2位タイは“まぐれ”だったけれど、自分もメジャーで勝てるという確信が持てた」
つまり勝てなかったことは、彼にとっては失敗ではなく“前進”だったのだ。
初日に出遅れ、婚約者のケイトリンさんに「予選落ちしたら週末、何する?」と聞かれ奮起したという25歳。ポイントランクも1位に浮上。年間王者も夢ではない。
週刊ゴルフダイジェスト2022年9月6日号より