来季は14試合に拡大! “LIVゴルフ”は世界のツアーを変えてしまうのか?
先週末には米国のニュージャージー州で第3戦が行われた「LIVゴルフ招待シリーズ」。回を増すごとに盛り上がりを見せ、ビッグネームの移籍は留まることを知らないようだ……。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Blue Sky Photos
初戦のロンドン、2戦目のポートランドに続き、先週末には前米国大統領、ドナルド・トランプが所有するベッドミンスターのコースで第3戦が開催された「LIVゴルフ招待シリーズ」(以下LIVゴルフ)。プロアマにはそのトランプ前大統領も参加。自身が関係するコースをトーナメント会場から除外したPGAツアーは、トランプにとっては、LIVゴルフと共通の敵と見なしているのか、まるでLIVと“共闘”するかのように、ツイッターで選手たちにLIVへの移籍を促している。
P・ミケルソン、D・ジョンソン、S・ガルシア、B・ケプカ、B・デシャンボーといった大物に続き、第3戦でもビッグネームが新たにLIVゴルフに加わった。欧州ツアー15勝のP・ケーシー、ともにPGAツアーで3勝を挙げているC・ハウエルⅢとJ・コクラック、そして最大のサプライズとなったのが、2016年の全英オープンチャンピオンであり、来年のライダーカップの欧州チームキャプテンに選ばれていたH・ステンソンだ。
ステンソン自身はLIVゴルフでプレーしても、ライダーカップのキャプテンは務めるつもりだったのだが、無情にもステンソンはキャプテンを解任されてしまった。これに対してステンソンは、
「この決定に同意することはできないが、今はこの決定を受け入れている」とツイッターやインスタグラムに声明を投稿している。ステンソンのLIVゴルフへの移籍に対して、SNSには批判的なコメントが多く寄せられており「あなたはすべてを失った」といったものや、母国の世界的なポップグループ、ABBAのヒット曲に絡めて「マネー、マネー、マネー」というコメントも。
こうしたビッグネームの相次ぐ移籍に対し、PGAツアーを守る立場として発言してきたのがR・マキロイとJ・トーマスだが、全英オープン前の記者会見では、ついにタイガー・ウッズがLIVゴルフについて自身の考えを語った。
「グレッグ(・ノーマン)はゴルフにとって最善とは思えないことをやっている」とノーマンを批判。
「グレッグが90年代前半に同じことをしようとしていたことは知っている。そのときは上手くいかなかったけど、今は上手くやろうとしている」、「世界のツアーやメジャーの主催者は、グレッグとは違う見方をしていると思う」と、LIVゴルフには否定的な考えを表明した。このタイガーの発言は、多くの選手に影響を与えることになるだろう。
主な選手のLIVに対する反応
「私には(LIVゴルフに参加した選手が)理解できない。多額の報酬を保証された選手たちは、何を目的に練習するのだろうか」(タイガー・ウッズ)
「ゴルフ界にLIVの居場所はない」(ローリー・マキロイ)
「LIVに参戦した選手はPGAや欧州ツアーに戻ってくるな」(ビリー・ホーシェル)
「彼(ミケルソン)と話すことは2度とないだろうね。ボクらはもう違う道を歩み始めたんだ」(フレッド・カプルス)
●LIVゴルフ、今年は8大会を開催予定
【第1戦】6月9日~11日
英国・ロンドン(センチュリオンクラブ)
【第2戦】6月30日~7月2日
米国・ポートランド(パンプキンリッジGC)
【第3戦】7月29日~31日
米国・ベッドミンスター(トランプナショナルGCベッドミンスター)
【第4戦】9月2日~4日
米国・ボストン(オークスGC)
【第5戦】9月16日~18日
米国・シカゴ(リッチハーベストファームズ)
【第6戦】10月7日~9日
タイ・バンコク(ストーンヒルGC)
【第7戦】10月14日~16日
サウジアラビア・ジェッダ(ロイヤルグリーンズG&CC)
【第8戦】10月27日~30日
米国・マイアミ(トランプナショナルドラルGC)※チーム戦ファイナル
スポーツ仲裁機関は欧州ツアーの処分を停止。
米司法省はPGAツアーの調査を開始した
LIVゴルフの超高額な賞金額と、ミケルソンが2億ドル(約270億円)、ダスティン・ジョンソンは1億5000万ドル(約200億円)、デシャンボーで1億ドル(約135億円)とも噂されている破格の移籍金によって、LIVゴルフへの参加を表明する選手が後を絶たない状況だが、こうした選手に対してPGAツアーも欧州ツアー(DPワールドツアー)も厳しいペナルティを科してきたのだが、ここにきて新しい動きが起きている。
まずは欧州ツアーだが、LIVゴルフに出場した選手には、スコッティシュオープンを含む3試合への出場停止を科していたが、英国のスポーツ仲裁機関(Sport Resolutions)は、欧州ツアーに制裁の停止を通達した。これにより、I・ポールターなど、LIVゴルフに出場した3選手が急遽、スコッティッシュオープンに出場できることになったのだ(仲裁機関の最終的な決定はさらにヒヤリングを重ねた後に下される)。これは欧州ツアーにとっては大きな痛手となった。
I・ポールターらの主張が認められて欧州ツアーは処分を撤回!
欧州ツアーではLIVゴルフ参加選手に3大会の出場停止と10万ユーロの罰金を科したが、英国のスポーツ仲裁機関(Sport Resolutions)は、欧州ツアーの処分を停止した
PGAツアーにおいても、米司法省がLIVゴルフを巡って、PGAツアーが反競争的行為に関わった疑いがあるとして捜査を開始したと、米国の複数のメディアが報道している。この件については以前、ノーマンがPGAツアーに送った書簡のなかでも、PGAツアーが選手たちを拘束するのは、いわゆる独禁法違反に当たる可能性を指摘していた。
一方のLIVゴルフからは威勢のいい話が聞こえてくる。先月27日、LIVゴルフは来季の概要を発表した。今年は8大会の開催を予定しているが、来年は14大会に規模を拡大する。開催場所も南北アメリカ、アジア、オーストラリア、中東、欧州と世界へ拡大する予定だ。賞金総額も4億500万ドル(約550億円)に膨れ上がる。当初は継続性に疑問符が付いていたLIVゴルフだが、少なくとも来年は今年よりもさらにスケールアップして開催されるようだ。ただし、出場選手の数は48人と変わっていない。出場を希望した選手がすべて出られるわけではないので、出場枠を確保するには早めに手を挙げる必要があり、それがトップ選手の移籍をさらに加速する可能性もある。
全英オープンで初のメジャータイトルを勝ち取ったばかりのキャメロン・スミスは、ノーマンと同郷ということもあり、次なる移籍候補として名前が挙がっている。全英オープンの優勝会見でLIVゴルフに移籍するのかという質問に明確に否定しなかったことも、噂を後押ししている。
そんなスミスを心配するアーニー・エルスは、現在の状況を打開するための独自の共存案を披露。さらに女子ツアーをも巻き込んで、ゴルフ界の話題はもうしばらくはLIVゴルフを中心に回りそうだ。
●PGAとLIVの共存方法をエルスが提案!
「プレーオフ後にLIVを開催すればいいじゃないか」
全英シニアOPの会場でエルスは「PGAツアーのプレーオフ終了後、秋の3カ月間にLIVゴルフを開催すればいい。でも3カ月だけだ。それで十分だと思う。終わったら本物のゴルフに戻ればいい」と語った
●LIVは女子ツアーもターゲットに!?
「ノーマンと話をする準備はある」(米LPGAコミッショナー)
ノーマンが女子ツアーに対する興味を示したことに対し、米LPGAツアーのモリー・マーコックス・サマンコミッショナーは「いろいろな可能性を検討するのが私の仕事」と対話する準備があると語った
●こんな人たちにもオファーが……
LIVゴルフの引き抜きは選手だけではない!
米CBSやNBCなどでゴルフコメンテーターとして活躍していたD・ファハティがLIVゴルフの放送チームに加わったことが発表された。FOXでゴルフキャスターを務めていたハン・スーアンも加入した
週刊ゴルフダイジェスト2022年8月16日号より