DJ、ケプカ、デシャンボー…トップ選手が続々移籍の“LIVゴルフ”いったいどうなる? 現状をおさらい
ここ最近、ゴルフ界を騒がせているのが「LIVゴルフ」。G・ノーマンが率いるこの新興勢力が莫大な資金力にものをいわせ世界のトッププロたちを取り込んでいるのだ。果たしてゴルフ界はどうなっていくのか?
PHOTO/Blue Sky Photos
ミケルソン、DJ、ケプカ、ガルシア……
そしてデシャンボー、お前もか!
数年前から噂されていた“新リーグ”が「LIVゴルフ招待シリーズ」(以下LIVゴルフ)として発表され、6月にその初戦がロンドンで開催された。LIVゴルフは全8試合、出場選手は48名で、3日間54ホールのストロークプレーによる個人戦と、各4名の12チームによる団体戦が同時に行われる(最終戦はチーム戦のみ)。ショットガンスタートを取り入れるなど、既存のツアーとは異なるユニークなフォーマットだが、最大の注目点は破格の賞金額で、個人戦の優勝賞金はなんと400万ドル、日本円で5億円を超えるのだ。しかも予選落ちはナシで、最下位でも約1600万円。団体戦を加えると1試合で最大6億円を超える金額が手に入る。実際、初戦に優勝したC・シュワーツェルは団体戦も制し、過去4シーズンの合計を凌ぐ金額を1試合で稼いだのだ。さらに4試合以上出場すれば権利がある年間チャンピオンになれば1800万ドル(約24億円)というビッグボーナスを手にできる。
この巨額な賞金を武器に有名選手を集めようとしたLIVゴルフだが、PGAツアーでは参加した選手にメンバーシップの剥奪や停止という厳しいペナルティを科すことを発表し、選手の流出に備えた。しかし、LIVゴルフは大方の予想を上回るビッグネームを集めることに成功。初戦のロンドン大会にはD・ジョンソン(以下DJ)、S・ガルシアなどのメジャーチャンピオンに加え、地元英国のL・ウエストウッド、I・ポールター、そして最後の48枠目を事前に参戦が予想されていたP・ミケルソンが埋めることで豪華な顔ぶれが揃った。
これだけの選手を集めるためには、賞金とは別に“移籍金”が支払われており、その額はたとえばDJの場合は100億円とも言われている。先週、米国で開催された2戦目にはB・ケプカ、B・デシャンボー、P・リードも加わり、ライダーカップ米国チームの主力たちが、続々と“移籍”しているのだ。
ちなみにLIVゴルフにはこれまで、選手会長の谷原秀人、木下稜介、香妻陣一朗、稲森佑貴の4人の日本人選手も出場しているが、PGAツアーから何らかの“制裁”を受けることはないのだろうか。この点についてPGAツアーのアジア担当ディレクターであるコーリー・ヨシムラ氏に聞くと、「現時点ではPGAツアーのメンバーではない選手に影響はありません。しかし今後、変更される可能性がないとは言い切れません」とのことだった。
<LIVゴルフ招待に出場した主な選手>
D・ジョンソン(17位)、B・ケプカ(19位)、A・アンサー(22位)、L・ウエストハイゼン(21位)、B・デシャンボー(31位)、K・ナ(33位)、T・グーチ(38位)、P・リード(39位)、S・ガルシア(63位)、M・ウルフ(77位)、P・ミケルソン(84位)、L・ウエストウッド(87位)、I・ポールター(96位)、C・シュワーツェル(123位)、M・カイマー(224位)、G・マクダウェル(372位)
<日本の4選手も出場>
稲森佑貴(73位)、木下稜介(95位)、香妻陣一朗(112位)、谷原秀人(188位)
※太字はメジャー優勝者。( )内は6月29日時点の世界ランク
LIVゴルフ出場選手への対応
●PGAツアー……メンバー資格の停止
●DPワールドツアー(欧州ツアー)……3試合の出場停止、罰金10万ポンド(約1700万円)
●JGTOツアー(国内男子ツアー)……出場容認
LIVゴルフの今後は「メジャー」の対応と
「世界ランキング加算」がカギになる!
LIVゴルフに出場した選手たちは高額な報酬と引き換えにPGAツアーに出場できなくなったのだが、厳密に言えばメンバー資格を失った選手と、停止されている選手がいる。前者はメンバー資格を自主返上した選手でDJやK・ナ、S・ガルシアなど。これらの選手たちはPGAツアーのHPを見ると、すでに選手リストから削除され、フェデックスカップポイントランキングからも外されている。
一方、返上しなかったI・ポールターや永久シードを持つミケルソンなどは、いまだに選手リストに掲載されており、フェデックスカップランキングからも外されていない。ミケルソンはLIVとPGAの両ツアーでプレーすることを希望しており、その可能性を捨ててはいない。というのも、ノーマンは「PGAツアーは独占禁止法に違反している」と指摘しており、今後もし法廷闘争に持ち込まれることがあれば、ミケルソンたちの希望が叶うかもしれないからだ。
さて、今後もLIVゴルフに出場するビッグネームは増えていくのだろうか。そのカギを握るのが4つのメジャー大会だ。
LIVゴルフ開幕戦の翌週に開催された全米オープンを主催するUSGAは、「すでに発表されていた出場資格を満たした選手から、後になって資格を奪うのはフェアではない」という理由で、LIVゴルフ参加選手の大会出場を認めた。ただ来年以降は未定で、「認めないことも可能性としてはある」というスタンスだ。全英オープンを主催するR&Aも出場を認めているが、こちらは「ジ・オープン」という大会の自負からオープンであるべきというのが理由だ。マスターズは、全英オープンとは対照的に招待トーナメントなので、どうなるかは想像しにくい。また全米プロを主催するPGAオブアメリカは、選手たちがメジャー以上に出場を切望するライダーカップも主催しているので、その判断に注目が集まる。ちなみにLIVゴルフに対決姿勢を見せるPGAツアーはメジャーを主催していないが、プレジデンツカップはPGAツアーの管轄なので、LIVゴルフの選手たちは出場できない。
仮にメジャーを主催する各団体が出場を認めたとしても、出場資格を得られるかどうかは別問題。そこで2つめのカギとなるのが、LIVゴルフの世界ランク加算だ。ノーマンはすでに加算申請を提出しているが、申請を認めるかどうかを決定する理事8人のうちの1人がPGAツアーのJ・モナハンコミッショナー。2人の対決の結果はいかに!?
4大メジャーのLIVゴルフ出場選手への対応
●マスターズ(主催:マスターズ委員会)……対応を表明していない
●全米プロ(主催:PGAオブアメリカ)……対応を表明していない
●全米オープン(主催:USGA)……2022年は出場容認。23年以降は未定
●全英オープン(主催:R&A)……2022年は出場容認
PGAツアーがツアー改革を続々と発表!
●2024年からレギュラーシーズンを1月から8月に変更
●シーズン終盤の新設3大会(ポイントランク上位50名が出場)を含む8大会で賞金総額を平均2000万ドル(約27億円)に増額
●2022-23シーズンからプレーオフリーズへ進出できる人数を125人から70人に変更
●ファイナルQT上位5選手にPGAツアーの出場資格を与える
●2023年からDPワールドツアーのランキング上位10選手に翌年のPGAツアーの出場資格を与える
LIVゴルフの影響はこんなところにも!
スポンサー契約を打ち切られた選手も!
DJは初戦のロンドン大会に出場したが、同週のPGAツアーはスポンサーのRBCの冠大会カナディアンOP。RBCはDJとの契約を解除した。キャロウェイの看板選手だったミケルソンも多くのスポンサーを失い、キャディバッグやキャップ、ウェアは自身のロゴが入ったものを使用
9・11の遺族会がLIV参加選手を非難
LIVゴルフの莫大な資金力はサウジアラビアの政府系投資ファンドによるもの。9・11で逮捕されたテロリストはサウジアラビア国籍が多いため、遺族会はLIVゴルフ招待に参加する選手を非難する声明を発表。全米OPの会見でも、この点に対しミケルソンに厳しい質問が飛んだ
週刊ゴルフダイジェスト2022年7月19日号より