18番のダボで全米プロを逃したミト・ペレイラ。さぞかし落ち込んでいることかと思いきや……?
ジャスティン・トーマスが2度目の“ワナメーカートロフィ”を掲げた今年の全米プロ。最後まで展開を面白くしたのは、ツアー未勝利のルーキー、ミト・ペレイラだった。
3打差のトップで最終日を迎えたペレイラは、苦しみながらも17番までトーナメントリーダーの座を守っていた。最終ホール、パーで上がれば優勝。ボギーでもプレーオフ。極度の緊張のなか、一瞬“魔”がさした。ティーショットは大きく右に曲がり、打球はラフを越え、クリークに吸い込まれた。
結果ダブルボギーを叩き、プレーオフを逃したことに落胆しているかと思いきや、悔しそうな顔ひとつせず記者会見に応じ、「正直、18番のティーではこのまま優勝できると思った。できなかったのは悲しいけれど、今週はすごくいいプレーができた」と、吹っ切れた表情。17番のバーディトライがわずかに届かず、差を広げられなかったが、「あれが入っていれば2打差? でも入れていたとしても18番はパーで上がらなきゃならなかったからね」と“たられば”の話には興味を示さない。
昨季下部ツアーで3勝を挙げ、今シーズンPGAツアーに昇格したばかりの27歳は潔い。
「18番のグリーンに上がってくるとき、仲間の顔が見えてうれしかった。本当は優勝する姿を見せたかったけれど、素晴らしい1週間だったと思えた」
近所に住み、毎週一緒に旅をする同郷のJ・ニーマンやスペイン語圏の仲間A・アンサー、S・ムニョスらが次々にペレイラを抱きしめ、健闘を称える。そこには18番の悲劇の余韻も優勝を逃した後悔もない。どこまでも明るいラテンのノリで、全員が最高の笑顔だった。
「重圧がかかった場面で、自分がどんな状態になるかもわかった。次はもっと上手くできると思う」。そういって前を向いたペレイラの“次”は、そう遠い未来ではなさそうだ。
週刊ゴルフダイジェスト2022年6月14日号より