【名手の名言】リー・トレビノ「パッティングでは、ボールにキスしている時間を長くしなくてはダメなのさ」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は、ツアー通算29勝、「スーパー・メックス」と呼ばれファンも多かったリー・トレビノの言葉を2つご紹介!
パッティングでは
ボールにキスしている時間を
長くしなくてはダメなのさ
リー・トレビノ
トレビノは現役当時、速射砲のごとくジョークをまじえてしゃべり続けていた。そうなった原因というのが、人に質問させないためだったという。
メキシコ国境に近い、テキサス州エルパソの極貧家庭に育ち、人種差別に苦しみながらキャディを経て、賭けゴルフで生活する身。それが全米オープンで勝った次の日から、人生は栄光へと一転する。
全くの無名だったのだから、マスコミを始め、まわりの人々がその出自を質問攻めにしたのは当然のことだったろう。
その質問を封じるには、自分がしゃべり続けること。それも相手が耳をそば立てて聞き入るくらいの“おもしろさ”があれば、質問することも忘れてしまうだろうと、トレビノは考えたというのだ。
表題の言葉もまた耳をそば立てるくらいに、機知に富んでいる。 パッティングではヘッドを真っすぐにしフォローを出して、インパクトゾーンを長くとれと言っているわけだが、トレビノにかかると相手がニヤリとする言葉に脚色されるのである。
今度、雷が鳴りはじめたら
頭のてっぺんに1番アイアンを
立てておくよ
リー・トレビノ
トレビノはかって試合中に雷に打たれて、九死に一生を得た経験がある。そんな生死にかかわる話まで、ジョークにしてしまうのがトレビノなのである。
ところでなぜ、雷防止が1番アイアン(ドライビングアイアン)なのか。そのオチは、“当たりにくい”からだそう。
現在では1番アイアンはユーティリティなどに変わり、使う人はほぼいない。ロフトが少ないため、パワーがないとボールは上がらないし、打ちこなすのが難しいクラブであったからだ。
それでも全米オープンのように、コースがタイトで正確さが最優先されるとき、ドライバーに代わり、パワーヒッターはこの1番アイアンを武器にしたものだった。1番アイアンを打てることがプロの矜持でもあった時代の、トレビノのジョークである。
クラブといえば、トレビノのキャディバッグの中はいろんなメーカーのクラブでごった返していた。他のクラブのセットからでも、使ってみて気に入れば、その1本だけ抜き出して現在使っているクラブと入れ替えるなどもまったく平気。
そんなときなど「なぜ俺のバッグが、ニューヨークの街中みたいになっているか分かるかい?」とウィンクをしてみせるのだった。
■リー・トレビノ(1939年~)
米テキサス州生まれ。母親と祖母に育てられたトレビノは、家計を助けるため、小学生の頃からショートコースで働いていた。見様見真似でゴルフを覚え、当時は極端なフックボールを打っていた。しかし、60年、ベン・ホーガンの練習を見てからフェードヒッターに改造し、プロ入り。兵役で沖縄の基地にいて、レッスンプロをしていたこともある。65年テキサスオープン優勝。その後も故郷テキサス州エルパソでレッスンプロをしていたが、67年に夫人が内緒で全米オープンにエントリーし5位となり、翌年に優勝。ツアー通算29勝、メジャーは全米オープン、全米プロ、全英オープンを各2勝ずつで計6勝を挙げる。マスターズだけ獲っていないのだが、白人優越主義の強かった時代であり、積極的に出ようとはしなかった。