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【世界基準を追いかけろ!】Vol.82「松山は“砂を取る量”で距離を打ち分けていた」

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回からは松山英樹の強さの秘密を探っていく。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 黒宮さんは去年のZOZOチャンピオンシップで、松山英樹選手の練習やプレーを間近で見てきました。元々学生時代はライバルとして戦った仲でしたが、彼の成長した姿を見て、どう感じました?

黒宮 英樹は元々ドライバーもアイアンも上手いですが、僕が一番驚いたのはウェッジの精度の高さです。けっこうライの悪いところからウェッジで打っても、あれだけ安心して見ていられる選手はPGAツアーの選手でもなかなかいない。ローリー(・マキロイ)とか(ジャスティン・)トーマスでも、あれだけ安心して見ていられないですよね。

目澤 アメリカの試合で見ていても、ウェッジショットでピンに寄る距離は、他の選手の半分ぐらいですから。えっ、あそこからそんなに寄るの、さっきの選手は3メートルくらいオーバーしていたけど……というようなことが本当に多い。

X 松山プロのウェッジの打ち方で、具体的に凄いなと思うのはどういうところですか。


黒宮 完全に手先を使わずにボールを拾いながらも、スウィングスピードを加速できるのは凄いなと思います。自信がなければ、ウェッジであれだけ“わき腹のスピード“を出して振れないです。普通は手を止めてヘッド出して球をとらえようとなりますからね。さらにびっくりしたのは、グリーン周りの技術の高さですよ。

GD どういった技術ですか。

黒宮 試合前の水曜日の練習場で、英樹のバンカーショットの練習を見ていたのですが、遠い距離のバンカーショットを見事に打ち分けていたんです。

X どんなふうに?

黒宮 バンカーから40〜50ヤード先の目標に打っていたんですが、普通だったらある程度ボールにクリーンにコンタクトして打ちたい距離を、取る砂の薄さによって距離を調整していたんです。練習場の手前のバンカーからグリーンのバックエッジまで45ヤードくらいの距離でしたが、普通はあんなに薄く砂をとって距離を出せないと思うんですよ。それが、まばらに飛んでいるならたまたまかもしれないですが、高さが全部そろっているのを見て、あ、完全にコントロールしているんだなと思って。実際には無意識だったかもしれないですけどね。

目澤 いや、無意識じゃないと思いますよ。

黒宮 ZOZOの最終日の朝のアプローチ練習を見ていても、必要最低限しかやらないでスタートして行ったんですよ。あれも凄いなと思いました。要するに、コースで打つであろう球種しか、朝の練習場では打たなかったと思うんです。

X つまり、その日の試合で使うアプローチの打ち方が、決まっているということなんですかね。

黒宮 そうですね。その前提としてあるのが、その日のショットもどこにどう打っていくかを、ある程度、自分が全部想像できているということなんでしょうね。

X 野球でいえば、1番から9番バッターまでこの球種を投げたら抑えられるってことが分かっているということですよね。確かにそれは凄いですよね。

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月12日号より