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【対談】青木瀬令奈×御嶽海<前編>「変わった人しかトップに立てない」ゴルフと大相撲“勝負の世界”を語る

開幕したばかりの、女子ツアーと大相撲春場所。試合に向けて、昨年ツアー2勝目を挙げた青木瀬令奈が、新大関・御嶽海関のもとを訪問。29歳、同学年の2人が、勝負の世界についてじっくり語った。

PHOTO/Takanori Miki

御嶽海久司(左)……みたけうみひさし。1992年長野・木曽出身。父は日本人、母はフィリピン人。小学生時代から全国で活躍。東洋大学卒業後、出羽海部屋入門。15年初土俵を踏み所要2場所で十両昇進、幕内入りも果たす。今年の初場所で幕内3度目の優勝を挙げ大関に昇進した
青木瀬令奈(右)……あおきせれな。1993年群馬・前橋出身。7歳からゴルフを始めジュニア時代から数々の大会で活躍、11年プロテスト合格。15年から7年間シード権を保持。昨年サントリーレディスで4年ぶりに優勝しツアー2勝目。20年にはJLPGAのプレーヤース委員長も務めた

青木 大関昇進おめでとうごさいます。私たち同じ歳ですよね。

御嶽海 ありがとうございます。この間(2月8日)誕生日でしたよね。おめでとうございます。もう20代ラストですよ。

青木 どうしましょう(笑)。日々、いろいろ試行錯誤しませんか?

御嶽海 そうですね……勝負については“流れ”を考えるようになりました。僕は、調子はいいのにすごく恥ずかしい相撲で負けた翌日は、なぜか絶対に勝って連敗しない。自分のなかでもどかしさというか、怒りがあるから。

青木 怒りをパワーに変えて。

御嶽海 そう。でも、逆に惜しい負け方をしたときは、翌日も同じように負けて、気づいたら5連敗ということも多い。ここから“流れ”の大事さを感じるようになりました。流れを切ったり、つかんだり。

青木 ゴルフではよく、自分との闘いとかコースとの闘いと言うんですけど、結局、相手もいるんです。同じ組でも今誰に“流れ”があるかもわかるし、結構ゴルフって流れの取り合いなんですよ。

御嶽海 へええ!

青木 一人がよくて一人が悪いことが多い。それも見ながら、揺さぶったりとか。

御嶽海 漫画にそういうこと書いていました。漫画、好きなんです。

青木 私も大好きですよ!

御嶽海 僕はスポーツ系が好きですが、画のタッチで選びますね。それで、『キングゴルフ』という漫画で、主人公が世界1位の人と世界5位の人と回っているとき、1位の人は淡々とプレーして、5位の人は「今のショット、アレだったよね」と声をかけたり、キャディさんも主人公の苦手な立ち位置にわざと立ったりして。

青木 駆け引きですね。ゆらゆらってしてみるとか(笑)。海外は露骨かもしれない。絶対邪魔だけど、言われないギリギリの場所に立ったり。でも確かに、世界ランク1位になる人は皆に対して人格者も多いんですけど、5位とか10位の人は、ちょっと棘があるかも。

御嶽海 漫画の通りです(笑)。

青木 皆、平常心でプレーしようとしているのを、少し跳ねさせたいんです。よい言葉でもいい。「さっきのバーディ、ナイスだね」とか。よいことも悪いことも含めてフラットでいたいのに、少し褒めてポンと気持ちを上げさせて……。

御嶽海 タイミングをずらすんだ。

青木 そうそう、傍から見れば悪い人に見えないじゃないですか。

御嶽海 性格悪いんですね(笑)。

青木 女子プロ、悪い人のかたまりです(笑)。でも、やっぱり、人とは変わっている人しかレギュラーツアーにはいないかもしれません。

「女子プロは人気、でも性格悪いんですね(笑)」(御嶽海)
「やっぱり、何かが変わっている人が強いです」(青木)

御嶽海 わかります。よく横綱は変わった人しかなれないと言いますけど、確かにそうです。だから「お前も変だね」と言われても、「じゃあ僕も上に行けますね」と。

青木 いいお話ですね。

御嶽海 経営者もそうだし、僕らみたいなスポーツ選手はそうですよね。わがままかめちゃくちゃ謙虚かどちらか。

青木 振れ幅が大きい。

御嶽海 中途半端な人は結局中途半端な結果で終わってしまいがち。

青木 やさしさが出たり。

御嶽海 ゴルフも相撲も勝負の世界です。それで飯を食っている。

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週刊ゴルフダイジェスト2022年3月29日号より

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