【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.74「長いドライバーの功罪」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO /Takanori Miki
ツアーではパターを除くクラブの長さを46インチまでというルールが今年から適用されるようになりました。せやけど、これはシニアツアーや一般アマチュアには適用されんということで、僕らには関係ない変更です。
振れるんやったら、ドライバーは長いほうが飛ぶのは間違いありません。47インチは試したことがありませんけど、46.5インチぐらいまでは僕も打ったことがあります。
長いと確かに飛びますけど、やっぱり風の日が問題です。
コースのレイアウトや風の具合によっては、厄介です。早く着地させて転がしたい。そういうのが僕のゴルフなんやから、それができんと、もうゴルフをやめるしかあらへんのです。“物干し竿”では、速くビューンと振れんのです。
ポカーンという一定のスウィングに合わせてくれ、みたいな感じで思っているなら、そら48インチでもええですよ。全部同じスウィングでやりたいというのであれば、長いほうが飛ぶんやからね。
でもいろいろやりたい。いろいろな球を打ちたい。思い通りに球を操りたい。ホールや風向きによって球筋を変えたいというなら、45.5インチから46インチまでいかないぐらいが、長くてもマックスやないかな、と僕は思います。もしかすると44.5インチぐらいが一番ええのかもしれません。
自分の最長不倒距離は何ヤードや! ということを完全に捨てきって、その代わり、テクニックの方向へということのほうがゴルフの幅も広がると、僕は思うんですけどね。
昔、開幕戦だった静岡オープンの1番ホールなんか、ものすごい打ち下ろしで、ビュンビュンのアゲンストがくるんです。
ある外国人選手が4番アイアンで抑えて打った途端に強風がきて、ボールが吹き上がってティーのすぐ前のラフに落ちたという話も聞きました。
パターでティーショットしたプロも何人もいたとか。それでドライバーとたいして飛距離は変わらんかったらしいです。
僕の場合は、卓球のスマッシュみたいにティーのすぐ下へ落ちるように打っていました。
そんな芸当は、やっぱり長いドライバーではでけへんです。
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年3月29日号より