【世界基準を追いかけろ!】Vol.66 コーチの大事な部分は“いかに腹をくくれるか”
目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は今シーズンの結果を踏まえ、コーチとしてのあるべき姿について話を聞いた。
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
GD 2020-21年シーズンも女子ツアーが終了し、プロコーチとしての評価に毀誉褒貶(きよほうへん)があったかと思いますが、いかがでしたか。
目澤 僕の場合は松山選手(※1)のマスターズ優勝でフィーチャーされましたが、課題も多く残った年でした。教えている女子プロに対しては、帰国時にマンツーマンでのコーチングが増えたので、個々人にフォーカスして教えることはできました。ただし、スウィングのチェックをする時間が少なくなってきているので、その点では限られた時間でどうコーチングしていくかは課題ですね。
GD 黒宮さんは、松田鈴英(※2)がシード権を失いました。
黒宮 僕たちプロを教えるコーチは、ある意味、選手に名前を売ってもらっているという側面もあるわけですから、結果は良いことも悪いことも受け入れないといけないと思っています。プロゴルファーのコーチをするということは、一つ一つの試合の成績に対して責任を持つということですから。その意味でも、まだQTがあるので、なんとか結果を出せるようにしたいです。
GD コーチにとって、まだシーズンは終わっていないわけですね。
目澤 そもそも選手にとってコーチとは、選手の調子が悪いときこそ必要とされる存在ですからね。
GD そういうときこそ、コーチの真価が問われるわけですか。
黒宮 コーチは失敗に対しての耐性をもっていないと成り立たない職業だと思います。例えば選手に対してこの理論ややり方が合っているかどうかという判断を、その都度くださないといけない。そもそも正解なんかないわけだから、コーチになりたての3年間は、僕とか目澤君は身を切られるぐらいの気持ちで「これで合っている」と判断をくだしてきました。
目澤 PGAツアーなどはけっこうハッキリしているから、失敗したコーチは翌週からいなくなるということはよくありますね。
黒宮 もちろん、合っていると思ったことが間違っていたこともありますよ。そのときに、間違いだったと言える精神的タフさを持っている人が、プロのコーチとして残っていると思います。
目澤 そういう熱い気持ちは未だにあって、幹仁から電話がかかってくるときは、いきなり選手の調子や技術部分などの悪い話から入ることが多いですよね。教えている選手をどうにかして直したいんだなという気持ちが伝わってくるから、僕も何かアドバイスできることを探そうとしますよね。
黒宮 同じことを言いたいのに、ちょっとした言い回しの違いで選手に伝わらないことがあるじゃないですか。そういうことがないかなと意見を聞きます。時間をかければ自分で答えが見つかるかもしれないですが、その間も選手は答えを待っているので、そこは何としても早急に解決しなければいけないという気持ちから、目澤君にアドバイスを求めたりします。
目澤 コーチ同士、いくら仲が良くても変なプライドがあるからなかなか相談はできないものですが、選手のことを真っ先に考えて行動できるところは凄いですよ。
(※1)2020年10月のCJカップで松山英樹と会い意気投合し、その数カ月後に松山のスウィングコーチに就任。4月のマスターズでの松山の優勝で、コーチの目澤にも注目が集まった。一方、コーチをしている日本の女子プロ選手は、20年9月に永峰咲希が日本女子プロ選手権で優勝し賞金シード22位。有村智恵は同50位でシード権獲得。河本結は19年度に同6位だったが、今季は61位(20年は米女子ツアーに参戦)でシードを失う(メルセデス・ランキング53位で前半戦は出場)。(※2)黒宮がコーチをする松田鈴英は18年11位、19年32位と保持したシード権を今季は94位で失った。淺井咲希は同52位、宮田成華は56位(11月21日時点)と共にシードを取れず。ファイナルQT(11月30日~12月3日)で巻き返しをはかる
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2021年12月14日号より