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【さとうの目】Vol.227 杉山知靖「独特な雰囲気を持つ“スギちゃん”の初優勝」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週はブリヂストンオープンで念願のツアー初優勝を挙げた杉山知靖に注目。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa

10月第1週のブリヂストンOPで、初優勝した杉山知靖プロ。かつて契約がミズノで一緒だったこともあり、スギちゃんと呼ぶ選手です。この試合、ボクは中継を担当しましたが、久々にパットのスゴい人を見た、という感じでした。

特に最終日の前半は、1番で左手前のバンカーからオーバーした3mをねじ込むと、シビアなラインを次々と入れ続けました。最終組で優勝争いをした片岡尚之プロに対し、先にスギちゃんが入れるという展開が続きます。片岡くんもよく粘りましたが、スギちゃんがグリーンに乗せると「もう全部OKでいいですよ」と苦笑いする始末。もともとパッティング巧者のスギちゃんですが、それにしても圧巻の戦いぶりでした。飛ばし屋の片岡くんとも飛距離でそこそこ勝負しており、以前より飛ぶようになった印象。フェードが必要なところ以外はすべてドローボールを打っていました。


神奈川出身で高校は高知の明徳義塾、2年先輩に松山(英樹)くんがいます。中央学院大2年の13年、日本アマの決勝で大堀裕次郎に敗れたものの2位になっています。大学4年の15年に最終QTに進んでプロ転向。アベマTVツアーを主戦場にしてきましたが、19年には2位が3回、賞金ランクで6位に食い込みました。

そして今年7月、同ツアーのプレーヤーズ選手権チャレンジで初優勝を飾ります。レギュラーツアーでの優勝争い経験はほとんどありませんでしたが、アベマTVツアーではそれまで5度の2位がありました。初優勝で、嬉しそうな表情を画面越しに見ましたが、優勝コメントで「これまでは周りのスコアやプレーを気にしてしまって最終日に勝ちきれないこともありましたが、今日は意識することなく最後までプレーできたと思います」と。下部ツアーでの優勝争いの苦い経験を生かして今年優勝したことがとても大きな自信になったことがうかがえます。ブリヂストンでのスギちゃんの戦いぶりは、まさにそうした自信と経験に裏打ちされたようでした。

もともと他の選手とは雰囲気が違う、独特の空気感を醸し出してもいるスギちゃんですが、稲森佑貴くんと行動をともにすることが多く、2人の独特な空気感が合うのかなあと思ったりもします。

そして優勝インタビューは、母子家庭で育ててくれた母への朴訥な感謝の言葉。人柄を感じさせました。現在の所属先は、社長さんがその人柄に惚れて契約してくれたのだとも聞きました。また、ツアー初優勝の後はお世話になった人へのお礼回りで、日本オープンへの会場入りが遅れたのもスギちゃんらしいエピソードです。この優勝を機に、さらなる飛躍に期待します。

フィニッシュが崩れない

「仲のよい稲森くんとよく似ているのが、いろんな球を打ち分けるというよりは、1つのスウィングを同じ感じでリピートするのがとても上手だという点。テークバックの最初のところをゆっくり丁寧に上げて、そこからフィニッシュまで一気に振り切って、フィニッシュが崩れることもほとんどありません」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月30日号より