【ゴルフに運はつきもの】Vol.15「実力も運も大事ですが…シニアの終盤戦は体力勝負!」
最強のサラリーマンとしてアマチュア時代に輝かしい成績を収め、49歳でプロ転向した“中年の星”こと田村尚之プロ。群雄割拠のシニア界で気を吐く異色プロが、自身のゴルフについて、そしてシニアツアーの裏側について語る。
ILLUST/Masahiro Takase
日本女子オープン、優勝は勝みなみ選手、おめでとうございました。2位に6打差の完勝でしたね。お見事です! このように、日本ゴルフ協会主催の難しいコースセッティングの試合では、往々にして大差が付くこともよくあるんです。JGAさんが設けた罠にはまらず、気持ちよくスイスイ行った選手と、さあ行こうか! とギアを上げたときに罠にはまって足踏みした選手とで。大半の選手が後者なので、気がついたら一人旅、となるわけです。日本シニアオープンでも、手嶋多一選手が8打差の圧勝でしたしね。
この勝利で勝みなみ選手は、日本ジュニア・日本女子アマ・日本女子オープンローアマに続く、JGA主催競技の4冠に輝いたわけです。ほんとお見事、あっぱれ! です。特に第3ラウンドの最終18番のアプローチ。ちょっと薄く入って強かったですが、ピンに当たって入ってナイスバーディ。結局これで単独トップに立って、そのまま逃げ切りましたね。本人は狙っていたんでしょうからラッキーとはいえませんが……運も実力のうち、という見事なショットでしたね。
そして、惜しかったのは私の予想。凱旋門賞のことではありませんよ!! 本誌前月号で、日本女子オープンの優勝予想のコーナーがあって、私は、本命が稲見萌寧選手で対抗を上田桃子選手にしてたんです。6打差とはいえ、上田桃子選手が2位タイに入ったんですよ。烏山城CCをJGAの難しいセッティングにされたら経験値と総合力がものをいうと思いまして。稲見選手が下位に低迷したのは意外でしたが、上田選手は特に3日目なんかはよく辛抱してましたもの。
ところで、なんとなんと、日本シニアオープンが終わった時点で、この私、シニアツアーの賞金ランキング1位なんです。私も知らなかったんですが、試合後に妻から賞金ランキング表の写メが送られて来まして。見出しは「どうせすぐに抜かされるから今のうちに!」って(笑)。
また、パーオン率も1位になってましたね。まあコロナ禍で試合数の少なかった昨年を除けば、過去6年間パーオン率が4位以下になったことはないので、これは試合数が増えれば定位置とも言えるのですが……。要はパッティングがようやくまともになった、人並みになった、ということでしょうね。開幕直後は乱視の影響でラインがまったく読めなくて、平均パット数が1.98とほぼ最下位でしたからね。ちなみに、平均パット数が2ということは、チップインが何回かないと基本的にアンダーパーにはならない、ということですからね……。それでパターを替えて、ボールに線も描いて……それでもしばらくはダメでしたが、我慢して続けていると、やっと慣れてきましてね。もちろん全部が入るわけではありませんが、少なくともボールが穴には向かって行くし、そうなるとゴルフが楽になりましたね。
そしてシニアツアーは、これから(この原稿を書いた時点で)5週連続の5連戦を含む、6戦が残っています。この頃になると選手は皆しんどくなって、PGAのスタッフに「この辺で一番近い病院はどこ?」「病院に連れていってくれる」なんて選手も増えて来ますが、みなさん最後の力を振り絞って頑張ります。まだまだコロナも油断はできませんが、もし有観客で開催される試合が身近でありましたら、ぜひ会場にお越しいただいて、シニア選手にエールを送ってあげてくださいね。選手にとっては、それが一番の薬ですから……よろしくお願い申し上げます。
田村’s ワンポイント
下りのパットはボールの下半分をしっかり打つ
下りのパットで軽く打とうとして、ボールの上っ面をなでて順回転になってオーバーしてしまうという人。下りは逆に大きめに引いて、インパクトで止めるくらいのつもりでボールの下側を打ってみましょう。カップを過ぎても止まる球が打てます
田村尚之
1964年6月24日生まれ。「日本ミッドアマ」2連覇、「日本アマ」2位などを経て49 歳でプロへ転向。2016年「富士フイルムシニア」でツアー初優勝
月刊ゴルフダイジェスト2021年12月号より