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【ゴルフに運はつきもの】Vol.13「地の利を生かし銀メダル。プレーオフの戦い方を教えて~」

ILLUST/Masahiro Takase

最強のサラリーマンとしてアマチュア時代に輝かしい成績を収め、49歳でプロ転向した“中年の星”こと田村尚之プロ。群雄割拠のシニア界で気を吐く異色プロが、自身のゴルフについて、そしてシニアツアーの裏側について語る。

前回のお話はこちら

稲見萌寧選手、やりましたねえ、銀メダル! 誠におめでとうございます。

先月号のこのコーナーで、松山英樹選手と畑岡奈紗選手はもちろんだけど、それ以上に星野陸也選手と稲見萌寧選手に期待したいと書かせていただきましたが、本当にそうなりましたね。やはり、地の利は大きいんですよ! 一番は高麗芝への慣れと対応、あと気候への慣れ、ですね。高麗芝って、基本的に海外の洋芝に比べてボールが浮くんです。フェアウェイではそれほど感じませんが、ラフではとくに差があります。フライヤーにもなるし、フェースの上側にボールが当たって、まったく飛ばないこともあります。

飛ぶのか飛ばないのか、判断しにくい高麗芝は、慣れていない海外選手には結構難しかったんじゃないですかね。

松山選手は、銅メダル争いのプレーオフには残りましたが、やはり直前でのコロナ感染の影響が少なからずあったでしょうね。勝負どころであれだけパットが入らないと、やはり勝ち負けには持っていけないですよね。技術云々というより、集中しきれなかった、という感じでしょうか。

星野選手にはもう少し頑張ってもらいたかったですが、オリンピック1カ月前の全米オープンと2週前の全英オープンに遠征したことが、結果的には影響したのではないでしょうかね。

その点、稲見選手はオリンピック前にずっと日本にいましたから。芝と気候と時差への対応が、一番できていた選手と言えますよね。まあ稲見選手が、従来から国内重視の考えを持った選手ということも、今回のオリンピックには有利に働いたということだと思います。

あと、稲見選手が一番幸運だったことは……東京オリンピックが1年延期になったこと。もし予定通り昨年開催されていたら、銀メダルどころか、出場さえできていなかったんですから。本当に稲見選手は幸運の持ち主だと思いますし、それをワンチャンスでものにした彼女は、本当に“もって”ますよね。

それから、これを言っては怒られるかもしれませんが、獲れる可能性のあった金メダルではなく、銀メダルだったのも、良かったのではないかと思います。いわゆる、名より実を獲った、という感じでしょうか。今回の銀メダルで彼女にとって一番大きかったのは、日本女子ツアーの5年シードが獲れたことだと思います。とくに国内重視の彼女にとっては、国内の5年シードは非常にありがたいこと。

もし金メダルを獲っていたら、一生それが付いてまわって、足かせにもなりかねないですから。例えば、渋野日向子選手には全英女子オープン覇者という看板がのしかかっていて、それが今、彼女を苦しめているかもしれません。

そういえば以前、プロ野球選手で世界の盗塁王と言われた福本豊さんが、国民栄誉賞受賞の打診があった時に、「それを頂いたら、もう立ちションもできなくなるから辞退します」と言って断ったとか。

今度、稲見選手に会う機会があったら、プレーオフはどう戦ったらいいの? ってぜひ聞いてみたいんです。稲見選手はプレーオフの勝率が100%ですって。一方、私はシニアでプロになって、2回プレーオフを経験していますが、1回目が鈴木亨選手、2回目はマークセン選手相手に、2回とも負けてて、勝率0%なんですよ。教えて、萌寧ちゃん!

※本記事を寄稿後、ファンケル・クラシックにて3人でのプレーオフを制し5年ぶりの優勝。田村プロ、おめでとうございます!


田村’s ワンポイント
バンカーショットは飛行機の着陸をイメージ

「バンカーではハンドレートにしてフェースを若干開いてあげればいいんです」と田村プロ。ハンドレートに構えることで、ソールの後側(トレーリングエッジ)がリーディングエッジよりも低い位置になり、ソールが後ろ側に傾いてバウンスが使える。それからは飛行機の着陸をイメージして、トレーリングエッジから接地し、徐々にソールの前側が砂に触れていけばいい

田村尚之

1964年6月24日生まれ。「日本ミッドアマ」2連覇、「日本アマ」2位などを経て49 歳でプロへ転向。2016年「富士フイルムシニア」でツアー初優勝

月刊ゴルフダイジェスト2021年10月号より