【ゴルフはつづくよどとこまでも】Vol.44 見上げた24歳、モリカワ!
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
すごいキレキレやったですね、コリン・モリカワ。全英オープン初出場で優勝ですよ。去年の全米プロも初出場で優勝ですからね。
聞くところによると、全英に行く前に、「リンクスは体験したことがないから、ヨーロッパの選手がどんなプレーをするのか、よく見てみたい」と言っておったそうですな。
それを聞いて、見上げた24歳やと思いました。普通の選手やったら、人のプレーを見るよりも、自分が頑張るというのが先に立ってしまうもんです。そうなると、当たった、当たらんと、そんな話ばかりになって練習ラウンドが終わってしまいます。
モリカワも、テレビで全英は見ておったと思うけど、やっぱり現場に来て、自分の目で上手い選手を見たり、球を打ったりしないと、わからんことがあるんです。
全米プロには勝っておっても、初めてイギリスに来た今の自分は、たいしたことがないプロのひとりにすぎない、という謙虚な気持ちやったと思うんです。だから、何もない状態で、ヨーロッパの選手のプレーぶりを受け入れられるわけです。
一番感心したのは、最終日17番のセカンドショットでした。ラフのボールを2クッションでピンの横に止めた。あれは素晴らしいショットやった。
地面の硬さ、受け皿がどうなっておるかわかっておらんと、ああいうショットは打てません。練習ラウンドでヨーロッパの選手のプレーをじっくり観察しておったので、打てたショットやったと思います。
たとえば残り160ヤードでも、ライの状態、下の硬さによっては、キャリー110ヤードで、あと50ヤードは転がることもあります。
コースマネジメントの巧みさみたいな言い方がありますけど、そういうクレバーさやのうて、このクラブで、あそこにこれぐらいのショットを打つとどうなるか、というのは、もう感覚の世界です。
本人は、打った途端に「ちょっと大きい」とか「ちょっと足らん」とか、瞬間にわかるもんです。
ティーショットではセンターを取るという基本的なスタイルで、セカンドは感覚を大事にした距離感で攻める。それもコンパクトなスウィングであんまり球を上げていませんでした。
人のプレーを見るのは、大事なことです。そこには、貴重な情報がぎょうさんあるのです。
「ティーショットではセンターを取りセカンドは距離感で攻める。コンパクトなスウィングで球を上げずにプレーしとりました」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2021年8月17日号より