【さとうの目】Vol.206 片岡尚之「ジャニーズ系オールラウンダー」
鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は片岡尚之。
初の選手会主催大会となった「プレーヤーズチャンピオンシップ by サトウ食品」。栄えある初代チャンピオンに輝いたのは、爽やかイケメンの片岡尚之でした。東北福祉大出身の23歳。お父さんから譲り受けた2ボールのパターを使い、母の日のお母さんへの感謝のコメントに、(石川)遼くんの15歳での初優勝を思い出しました。息子にしたいタイプとして、女性に人気が出るのは間違いありません。
片岡くんを初めて見たのは14年のANAオープン。高校2年の16歳で北海道オープンを史上最年少で制し、さらに北海道出身で初めて日本ジュニアにも優勝。その資格で出場したのがANAオープンで、プロの試合は初体験。ジャニーズ系の顔立ちとしっかりしたコメントが印象的でした。
ちなみにこの試合で優勝したのが宮本勝昌プロ、ローアマに輝いたのが片岡くんです。表彰式で並んだ2人が7年の歳月を経て、優勝争いを演じたのは感慨深いものがあります。
その後、ナショナルチームにも選ばれ、強豪・東北福祉大に進みますが、大学時代は特記すべき記録もなく、名前を聞くこともなかった。プロツアーのデータを見ても15年は福島オープンとダイヤモンドカップで予選落ち、17年の日本オープンでは57位タイ。ボクの記憶からも消えつつある存在でした。
再び懐かしい名前を発見したのは、コロナ禍で開催された昨年7月のゴルフパートナーエキシビショントーナメント。コースでカートを引っ張る選手を見て「ジュニアみたいな子がいるなあ」とバッグの名を見たら片岡尚之とある。「あのANAのときの片岡くんか!」と思い出したのです。大学4年で初挑戦したQT48位で出場権を得て、プロデビューは昨年のフジサンケイ。プロ4戦目で今回の初優勝。続くダイヤモンドカップでも4位に入りノッています。
初優勝の勝因は何より18番でバーディを果敢に狙ったセカンドショットでしょう。片岡くんが15アンダーで先にフィニッシュ。大混戦で、片岡くん以外に杉本エリック、植竹勇太、時松隆光、石川遼、宮本勝昌の5人が15アンダーで並んで最終18番を迎えましたが、全員ボギー以上でまさかのプレーオフなし。ただひとり片岡くんが精度の高いアイアンを打ち、2パットで収めることができるグリーン右中段に乗せたのです。JGTOのプロフィールには「パターとショートアイアンの精度が武器」と書いていますが、飛距離も意外とあり、パーオン率、サンドセーブ率やリカバリー率も軒並み上位でオールラウンドプレーヤーという印象です。
男子も世代交代が激流のように進んでいます。「片岡くんが勝てるなら」と同年代の選手たちを奮い立たせるでしょう。これはボクらがAON時代からジャンボさん1強を経てマル(丸山茂樹)、伊澤(利光)さん、(田中)秀道……らが出現した90年代半ばに似ています。選手会主催の新しい大会も含め、大きな転換期にいると思います。
基本に忠実で美しい
佐藤信人
さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月8日号より