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【インタビュー】上原彩子<前編>ヨーロッパでもシード獲得! 40歳からの欧州挑戦、2年目を振り返って

プロ入り23年目を迎えた上原子。日本で10年、アメリカで10年、シード選手として戦ってきたが、昨年から新たにヨーロッパという舞台で再びシード選手として存在感を出している。なぜ上原はこんなにも長く活躍し続けられるのか? 欧州での1年を振り返りながら、その強さの秘密に迫った。

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、本人提供

上原彩子 うえはら・あやこ。1983年沖縄県那覇市出身。12歳でゴルフを始め、おかやま山陽高校卒業後04年プロ入り。日本ツアーで3勝を挙げ、14年から米LPGAツアーに本格参戦。現在は欧州女子ツアーメンバー。リンクスコースが好み。「日本では川奈、アメリカはミッションヒルズが好きです」

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今年、LET(欧州女子ツアー)で2年目のシーズンを終えた上原彩子。「昨年は“一番ベテランのルーキー”とホームページで紹介されたんですよ」と話す上原は、相変わらず天真爛漫だ。 

今月、42歳を迎える。周りの仲間は皆、自分より若い。その選手に「どのくらいで区切りを付けようと思っているのか?」と聞かれるのだという。「自分ができるまでやり続けたいと思っているので、そんなことは考えたことがない、と答えます。すると『自分があなたの年になったら絶対できていないと思う』と言われます」

今年は、16カ国18試合に出場し予選落ちは4回のみ。トップ10入りが2回、オランダの試合での4位が最高位だ(個人戦)。ポイントランキング(Order of Merit)は61位となり、昨年“準シード扱い”となった74位(14カ国16試合)を上回った。

「昨年よりよい順位で終えることができ、シードもしっかり取れたのでよかったです。体調を崩して出られなかった試合が4試合あり残念でしたけど、昨年出られなかったアラムコシリーズなど大きな試合にも出られましたし、トータルで見たらいい年でした。来年にもつながります。アメリカより断然、移動が多いので、オンとオフのメリハリや、コンディショニング、スケジュール作りが来年の課題だと感じています」

今年を振り返ってもらおうとしたら、早くも来年の課題を話すあたりが、常に前向きな上原らしい。上原の言うスケジュール作りとは、休む試合を入れるということではなく、1週間の過ごし方を変え、時間を管理することだ。

「たとえば基本8時間は寝るんですけど、あと1時間多く睡眠時間を取る。特に長い移動をした日には、練習やトレーニングはせずにとりあえず寝るなど、まずはリセットから始めて練習に入っていくようにしたい。体の免疫力も上げていきたいです。ヨーロッパって寒い期間が長いのでしっかり体を温めていかないと。食事には気を付けていたのでそれ以外の面で。寝て冷やさないようにすることも一つの方法です」

寝ることに苦はないと笑う上原。これは大きな強みだ。ジュニア時代に父と訓練して身に付けた。時差ぼけもほぼない。

帯同するトレーナーの玉城寿乃は、「睡眠もですけど、今年は日々のトレーニング量も少なかったんです。来年はオフからしっかりメニューを組んでやっていきます」

1年を通してしっかり戦っていける体を作る。これは、長いスパンで取り組んでいるスウィング改造にも関係してくる。

「大きな筋肉を使って、小手先でコントロールするのではなく、機械的に効率のよい体の使い方をする。地味に続けて改善しています。ゴルフの動きだけだとスウィングを直し切れないのでトレーニングもしっかりして体に覚え込ませたい。安定性と再現性にも必要です」 

「ゴルフがパワーゲームになってきた」と言いながらも嘆きはしない上原。「私、いつも20Y後ろから打ってますから。でもそれで先にいい場所につけたらプレッシャーになりますしね。後ろを振り向いて“ナイス!”と言ってくれる選手もいますよ(笑)」

今年、フェアウェイキープ率は79.17%、パーオン率が62.73%。

「技術的には、ここぞの場面でパットが入らないことが多かった。その部分は強化が必要ですし、あとは100ヤード以内の精度。私は飛距離が出ないのでそこでしかスコアを作っていけない。その精度はもっと上げていかないといけないです。ショットの精度のためにも体作りは大事です」

このへんが修正、調整できれば、もっと戦える実感があるのだ。

「(優勝の)チャンスがあるコースはめちゃくちゃ多いと思うんです。アメリカみたいに距離がすごく長い、飛ばし屋有利のコースもありますけど、全部が全部ではないので。狭いコースも多くてマネジメントが要求されるコースも多い。ピンポイントに狙っていかなければならない部分は、ヨーロッパの面白さの一つですね」

経験とゴルフ脳、総合的なゴルフ力も上原の武器だ。 そして、上原は精神的に落ち込んだことが「あまりない」。

「今年一番落ち込んだのは、インフルエンザでスペインでの最終戦に出られなかったこと。予選落ちもない試合なのに。でも今は受け入れています。私にだってつらいときは一応、ありますけど……そんなとき、何してるかな(笑)」

横で玉城が「つらそうなところ、あまり見たことがないです。体がつらそうなことはありますけど」と真面目に語る。「そうですね……忘れやすいということはあるかもしれません。優勝のチャンスを逃した試合の後も、すぐにリセットして、『来週のコースもチャンスだしね』と思いますから」

Web「みんなのゴルフダイジェスト」で連載中の上原。そのタイトル「いちゃりばちょーでー」は沖縄の言葉で、「一度会ったら皆家族」という意味。上原の欧州挑戦の日々をつぶさに知ることができる

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週刊ゴルフダイジェスト2025年12月30日号より