【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.884「先日見た高校生にまた新たな楽しみが増えました」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら クラブやボールなど道具が進化すれば、それにつれてスウィングも変化していくかとは思いますが、未来における「スウィングの最終形」があ……
先日のステップ・アップ・ツアーで高校2年生が優勝して、日本女子オープンでは高校1年生が優勝争いをしていました。最近の高校生が今までと違って特別に強いことについて岡本さんはどのように思われていますか。(匿名希望・55歳・HC3)
兵庫県のABCゴルフ倶楽部で開催されたステップ・アップ・ツアー「SkyレディスABC杯」で、16歳の高校2年生・後藤あい選手(松蔭高・神戸市)が優勝しました。
彼女のプレーは高校生とは思えないような落ち着きと並外れた飛距離で出場プロ選手たちを脅かすものでした。
ビックリしたのは解説席にいたわたしも同じ気持ちでした。
ドライバーショットがほかの選手たちの狙いどころとは違い平均260~270ヤード。
さらに高い確率でフェアウェイを外さない。
実際に目にする彼女のティーショットには、正直かなりの衝撃を受けました。
距離も長くステップ・アップ・ツアー唯一の4日間トーナメントでもあるこの大会、日が進むほどにスコアが伸び悩む試合展開になっていました。
そんななか後藤さんは、最終日最終組でスタートしていったん優勝争いから後退したかに見えましたが、終盤16番から3連続バーディとして大逆転。
ステップ・アップ・ツアー史上7人目となるアマチュア優勝を飾りました。
前半でスコアを落とすなどコースマネジメントやアプローチでの未熟さを指摘する方もいましたが、小気味のいいシンプルなスウィング、決断が速く無駄のないプレーぶりは堂々たるものだと私は思いました。
そして圧倒的な飛距離で他の選手を50ヤードも置いていけば「これはかなわん……」というのがプロたちの本音だったと思います。
後藤さんは9月に開催されたレギュラーツアーの東海クラシックで行われたドライビングコンテストで277.8ヤードを記録してプロたちを差し置いて優勝した実績もありました。
そこでわたしの頭の中には、思わず遠い昔のことがよみがえってきました。
ソフトボールの国体優勝投手からゴルフに転向してプロデビューしたばかりの頃のわたしは、飛距離ばかりが注目され勝負どころでミスをすると決まって「岡本はパワーがあるけど小技はイマイチ」とよく指摘されていました。
でも、わたしのプレーをつぶさに観察したわけでもない記者の方々が、あら探しのようにスタッツだけ見て決めつけて評していたことも多くありました。
本当のことは知らないのに、世間は往々にして印象だけで判断してしまうことが多くあります。
アスリートは他人の評価に関係なく、上を目指して研鑽(けんさん)に努めることに全力で集中する人間です。
彼女はまだ高校生です。技術や知識を身につけるため、さまざまな経験を積むのはこれからなのですから、周りに惑わされず本人にはそのことを忘れないでいてほしいと思います。
優勝したからといって順風満帆のゴルファー人生が保証されるわけではありませんし、今後プロになったとしてもそこがゴールでもありませんから。
ちなみに編集部の方に聞いたのですが、彼女も中学のときソフトボール部に入ってピッチャーとショートをやっていたそうですね!
スポーツではその時代に優れたプレーヤーがいることで選手全体のレベルをけん引して急激に業界全体を押し上げることがあります。
いまツアーで次世代を担う多くの中高生ゴルファーたちが上位に顔を出す試合が増えたことはとても頼もしい限りです。
そして今回の後藤さんのプレーとインタビューの受け答え方を見ていて、久しぶりに興味が湧いてくる選手と会えたような気がしました。
これからの日本女子ゴルフ界、また新しい楽しみが増えましたね!

「ラウンドレポートしていた藤井かすみさんが記していたメモです。最下段の小さく書かれた数字はバウンス角を記しているんですよ」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2025年11月18日号より


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