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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.239「メジャー勝利以上の経験」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa

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  • 高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。 PHOTO/Tadashi Anezaki >>前回のお話はこちら 朝のパッティンググリーンでの練習でボコボコ入ってたら、「今日は調子がええぞ」と気持ちよくスタートできますよね。でも中には、「いや練習グリーンやか……

山下(美夢有)さんが女子ゴルフの今季メジャー最終戦、AIG全英女子オープンで優勝しました。これで春のメジャー初戦のシェブロン選手権で優勝した西郷(真央)さんに次ぐ、日本人女子6人目のメジャーチャンピオンになりました。

渋野(日向子)さんが2019年に全英女子オープンで優勝してから、ここ数年で日本の女子はメジャーで頻繁に優勝争いに加わってきています。西郷さんはツアー参戦2年目、山下さんは1年目で初優勝がメジャーですからね、最近の選手は本当にすごく前向きにプレーしとるのが印象的です。

一足先に(2017年から)アメリカで戦ってきた畑岡(奈紗)さんにしてみれば、また複雑な心境になったんやないかと思います。すごい実績(ツアー6勝)を上げているものの、あともう一歩いうところでメジャーに手が届かないことが何度もあったわけですから。もちろん今後、彼女がメジャーに優勝をするチャンスは何度もあると思いますが、よしんばそれが叶わなくても、落胆することはない思います。


たとえば、大学受験で早稲田を目指してたけど落ちて、浪人して再チャレンジする人はいっぱいいますやんか。そして翌年も受からなかったとしても、「こんだけやってダメやったんやから、もう早稲田に行かんでもええわ」くらい思えたらいいということなんです。

早稲田に行くために勉強した財産が残っているわけですよ。もちろん何の履歴もつきません。でも、自分の脳みそのなかに財産は残っているやないですか。それは何億の価値があるわけです。

もちろん、なかなかそういう心境にはなれないです。何人も勝ったけど、自分は勝ってない。でもこれまでアメリカで日本人選手の第一人者としてやってきた岡本(綾子)さんでも(宮里)藍さんでも、遂にメジャーには勝てなかったんです。

でも彼女たちは、そらもう何度も優勝争いを経験し、宝の山が自分の中にあるわけです。それだけの経験を持っているから、岡本さんみたいに解説の仕事をするようになったときに、本当の渋みのある言葉が出るわけです。それはほんとプライスレスやと思います。

「山下さん、素晴らしい。挑戦しておる皆さんのすべてのショットや経験が、プライスレスなんですよね」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2025年9月2日号より