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【インタビュー】日本女子アマ覇者・中澤瑠来「“次はない”の覚悟で5回目のプロテストへ」

本年度の日本アマチュア選手権、日本女子アマチュア選手権のチャンピオンが決まった。埼玉栄高校の先輩後輩である2人は、すでに次の目標に向かって進んでいる。改めて話を聞いた。

PHOTO/ Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Yasuo Masuda

中澤瑠来 なかざわ・るな。2003年生まれ、埼玉県出身。5歳頃ゴルフを始め、埼玉栄高を卒業後プロテストに4回挑戦。東松山CCの研修生として午前中はポーターなどの仕事をしながら練習に励む

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6月中旬に行われた日本女子アマで勝ったことについて「まったく実感がなかった」という中澤。

「最終日は熱中症っぽくなって。体調が悪すぎて死にそうで。最終組の緊張も感じず、とにかく歩かなきゃという感じでした」と今なら笑いながら話せる。しかし、本人が「結果オーライ」という結果を生んだ要因は確かにあるのだ。

「昨年のテストを受けた後、『本当に自分で変わらなきゃ』と思ったんです。毎年テストを受けるとき『今年はこれだけやったんだから』と臨むんですけど、結局『もっとこうしておけばよかった』となる。そういうことはナシにしようと思って。今まで以上にトレーニングをしたり、練習の質を上げて頑張ってきたんです。日本一より4日間60台で回れたことが成長だと思います。内容的にも安定していて自信になりました。何より今年のプロテストを最終から受けられるのはとても大きいです」

“変わらなきゃ”の想いが質を上げてくれた

ショット力を生かす考え方とマネジメントを教えてきたと田子コーチ。「単純な攻め方になりがち。バーディやパーを取るルートは何通りもあるんです」


ゴルフを始めたきっかけは、5歳頃父の練習に着いて行き、たまたまジュニアスクールの体験レッスンを受けたこと。小学校に入る頃にはプロになろうと思っていたらしい。「プロが何かはわかっていなかった。本気で職業にしたいと思ったのは中学になってからです」

中学は公立に進み、中3のとき関東ジュニアで優勝。その後、埼玉栄高へ。在学中にプロテスト1回目を受験。「緊張はあったけど、まだ怖さも知らず、勢いで最終まで行けた。このとき、受かっていれば、人生変わったと思います」

竹田麗央や神谷そら、川﨑春花と同じダイヤモンド世代。同級生の活躍を見ない日はない。

「正直、毎日焦っています。友達もたくさんいるし、『頑張れ』という気持ちはあるけど、何で自分はそっちにいないんだろうと……悔しい気持ちのほうが強い。今の状況は負けていますけど、同じ土俵で戦ってきて、一度も勝てなかったわけではないですし……」

自身を「負けず嫌い」だと評する中澤。懸命に言葉を絞り出す。

「今は、あそこに『行きたい』というより、『行かなきゃ』という気持ちがあります」

心強い味方ができたのは3年ほど前。スポンサードしてくれるゴルフ5との縁で田子元治プロがコーチになった。

「教わって変わりました。私は適当というか大ざっぱな性格で、データなどで細かく言われてもわからない。そこを上手く教えてくれます。あおり打ち気味を直すため、ベタ足気味で左肩を浮かせないように打つ、など技術的な部分はもちろん、私生活でも、たとえばキャディバッグのファスナーを全部閉める、ペットボトルの蓋をしっかり締めるなど、面倒くさがりのところを1つずつ直すように言ってくれたんです」

最初は「そんなのゴルフに関係ないでしょ」と思っていたという。

「でも今は、当たり前のことができないのにゴルフは上手くなれないなという頭になれました」

目下の目標はもちろんプロテスト合格。年々“狭き門”となっているのは周知だ。しかし今年、中澤は「自信」という力を得た。

「再現性が課題です。気持ちが入ったときでも同じ動きができるように。私はショット系が得意ですけど、テストになると緊張で上手くいかなくなる。手先で打っていると緊張で手元が狂うから、もっと体を使って大きい筋肉で打つイメージで取り組んでいます」

テストの先には“プロの道”がある。「積極的にピンを狙いバーディがたくさん取れるような、見ていて楽しく誰からも応援してもらえるプロになりたい」

特に憧れていたプロも目標とするプロもいないという中澤。

「小さい頃は無理やりゴルフをやらされていた感じで、練習も嫌いで。泣きながら練習するのに、ゴルフを止めろと言われると嫌がる(笑)。進んで練習を始めたのは高校に入ってからです」

今はゴルフが好き?

「好きじゃなきゃこんなに長くやらないですよね。これを仕事にするんだという気持ちです。今年で最後、次はないぞと。後悔のないように準備して臨みたいです」

女子アマの勝利は、中澤を応援する力を感じさせてもくれた。

「自分がびっくりするくらい、メンバーさんやコースの方が喜んでくれました。全然知らない人にも言われて嬉しかったです」

「コースに張り紙もしてくれて嬉しかった」

東松山CCで早朝からバックの積み下ろしなどを行う。「朝が苦手な私を変えてくれた。女子アマに勝ってすごく喜んでくれて。メンバーさんが張り紙を出すように言ってくれました」

米女子ツアーで活躍する岩井姉妹は高校の1つ先輩だ。「すごいですよね。一緒のチームでやっていた人が今は日本を代表する選手です。早く自分もそうなりたいです」。

名前の由来を聞くと、「瑠の字には、『宝石』という意味があって、それが家に来たということみたい。宝石なんですかねえ(笑)。今や『早くプロになって出ていってくれ』と言われています」

22歳の「宝石」は、プロとなって輝くため、自分を磨き続ける。

左から父・敬さん、妹・紗来さん(埼玉栄高2年)、中澤、田子コーチ。「プロテストに向け、ショートゲームの練習量を増やし磨いています。どういう球でどこに落としてどう転がるかのイメージ力が大事。テストなどで窮地に来たときは感性からくるリズムや軸がモノを言います。気が強くて負けず嫌いなところはゴルフ向き。ありきたりですけど誰からでも愛されるプロになってほしいですね」(田子)

週刊ゴルフダイジェスト2025年9月2日号より