【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.209「心がショットをしているんだ」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Masaaki Nishimoto
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アメリカのPGAツアーの予選会を金谷拓実くんが3位で突破して25年の米ツアー出場権を獲得しました。アメリカのLPGAツアーの予選会は、トップ合格の山下美夢有さんら5人が通過し25年の出場権獲得。これで25年のシード権を争う予選会(QT)が一通り終わりました。
QTいうもんは、国内外やツアーの大きさの違いはあれど、言わば「剣が峰の戦い」ですから、そら緊張します。こういった精神状態で臨むときの心構えを青木(功)さんはよく「命まで取られるわけじゃないんだから」と説いておりました。
僕も、最後にシード落ちした試合では、パターを打つときに「こんなん外れても俺の人生に何の影響もないから」と思うてやってました。そうやって、ゲームに関わらないでゲームができれば一番いいんです。
開き直って思い切りやったろ、いうふうにできたらいいんやけど、どうしてもどこかで保険をかけてる自分が出てくるんですわ。この守りたいという気持ち、これが一番悪い。そんなもん、守りたい思うて守れるくらいならとっくに試合で勝っとるし、QTまでもつれ込んでないやろいう話です。
言うても「むやみやたらに攻める」ということやなく、「思い切ってやれるかどうか」です。そらタイガーでも50センチのパットが外れることがあるんやから。結果なんてやってみんとわからない。
砲台グリーンでピンが右に切ってたら安全に左を狙いたくなるけど、右に外れてもいい思うてピンを狙って打っていく。そしたらバーディもパーも取れる。だから心理というのがすごく大きいんです。
大先輩の海老原(清治)さんが「お前がショットをしているんじゃなくて、お前の心がショットをしているんだ」と教えてくれた話を前にしました。何とかあそこに行ってくれとお願いしながら打ってたら、思い通りの球は打てんいうことです。
常に心が打っているんだと思ってゴルフをすれば、プロゴルファーでもパフォーマンスは出せますよ。プロとして生きていくことと向かい合えば、シードなんか外れてもまた這い上がったると思ったらええだけのことです。
「2025年、心が打っていると思うてゴルフしたいもんですね」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2025年1月7・14日合併号より