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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.201「トントントン、チュルチュルチュルッのテクニック」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Blue Sky Photos

前回のお話はこちら

この間PGAツアーのプレーオフの試合を見ていたら、あるホールでS・シェフラーがティーショットを左に曲げて、2打目、グリーン方向を狙うには木の枝が邪魔やったので低いフックを打ったんです。

その打ち方を見ていたら、もちろんボールスピードなんかは全然比べようもないけど、あれやったら僕のほうがもうちょっとうまいこと曲げれるなあと思ったくらい、上手くなかったです。

世界ナンバー1にケチつけるんはおかしな話やけど、やっぱりパワーゴルフなんですよ。だから前に行かせる系はいいけど、トントントン、チュルチュルチュルッと6バウンド目に止めたろかとか、そんな気配の打ち方はまったくなかった。

ということは、そういうことを普段からやってないということですわ。つまりキャリーでパーンと行かすことばっかりやっとる。まあそれだけのショット力があるといえばそうなんですけれどね。


でもイギリスのアイルランドとかスコットランドでやっていたら、低い球でトントントン、チュルチュルチュルの6バウンドで止める必要性があるわけで、そういうところでやってきた選手とはだいぶ違います。上手さの測り方がテクニック系やなく、やっぱりパワー系ですね。

今、アメリカのPGAツアーが世界ナンバー1のツアーですけど、もうちょっとヨーロッパのDPワールドツアーにも目を向けてほしいいうのが僕らの願いです。

体格的に劣っても、こんなテクニックで戦っている人がおるいうことをもっと世界の人に知ってほしい。

パリ五輪の男子ゴルフは、松山(英樹)くんが銅メダルを取りましたけど、金メダルはS・シェフラー、銀メダルは英国のT・フリートウッドでした。五輪で解説をしとった体操界のレジェンドの内村航平氏はフリートウッドの大ファンで、今回現地でプレーを見られて喜んどったそうです。彼は現役時代に着地をピタリと決める技の正確さで有名でしたからね、ヨーロッパのテクニック系のフリートウッドが好きやいうのもわかる気がします。

フリートウッドはDPワールドツアーでは賞金王になっているのに、PGAツアーでは1勝も挙げていないんは、コースの違いもあると思いますわ。

「フリートウッドはヨーロッパのテクニック系。アメリカでも優勝してほしいですね」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年11月12日号より