【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.199「右手前」「左奥」のミスを「左手前」「右奥」に変える
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Hiroyuki Okazawa
ゴルフでは右打ちのプレーヤーが圧倒的に多いわけですから、自ずと右打ちを想定した設計のコースが多くなります。そうなるとグリーンの左奥と右手前がハザードになります。心当たりありませんか、右手前に池があって、左奥にバンカーがあるグリーンは何となく嫌な予感がするもんです。
その理由は、右打ちのゴルファーは、ちょっとかすったらグリーンの右手前に球が行き、気持ちが入りすぎてガッと強く力を入れたら左奥に行く。この2つのミスが実に多い。
そこそこ球が打てるようになった人は、ずっとこの2つのミスに悩まされななあかんようになります。
パー3なんかでピンが左手前に切ってある以外は、ショートのミスはだいたい右手前です。この「右手前」と「左奥」のミスを、「左手前」と「右奥」に変えることができたら、まあすごいですわ。
大きいクラブを持ってわざとスライスを打って右奥で止めるとか、小さいクラブで左手前からいくとか。これをできたらゴルフのスコアになってくるということです。
三井住友VISA太平洋マスターズが行われる太平洋C御殿場Cの18番ホールのグリーンはまさにその配置になっていて、毎年、最終日は右手前にピンが切られます。何人かのプロがピンを狙っていった球が、ちょっとかすって右手前のグリーンに食い込んでいる池に入るシーンや、2オンを狙って左サイドのバンカーにつかまるシーンをよく見ると思います。
この18番グリーンは2段グリーンになっておるので、最終日の右手前のピンの場合には、右奥の傾斜を狙って奥から戻すという攻め方をする選手もいてます。この奥から戻すショットに多くの拍手が沸きますが、実は、この攻め方は手前の池が全部消えるんですよ。
だから、言うたらあれはそれほどプレッシャーがかからず、誰がやってもそれなりにできるショットです。
よく、池越えでピンが手前で奥10メートルに乗せてピューッと戻してくると、「さすが、技ですね」なんて言うけれど、なんにも技は関係ない。フォローでグリーンが硬くて池越えでピンが手前。これを1クッション、2クッションでチョンチョンと攻めてくる。これこそ“技”いうもんです。
「名物ホール。最終日のピン位置は、プロにとっては意外にプレッシャーはかからんショットになります」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2024年10月29日号より