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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.832「“2年目のジンクス”という言葉、たしかに最近耳にしなくなりました」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


ここ数年の日本女子プロゴルフ界を見ていると、新人が大活躍するかと思うと、すぐに次の世代のスターが出てきます。そんななか「2年目のジンクス」という言葉は聞かれなくなりましたがいまや死語なのでしょうか?(匿名希望・62歳・HC8)


「2年目のジンクス」という言葉、あまり耳にしなくなったような気がしますね。

一昔前までは、活躍した翌年のシーズンに不振にあえぐケースが多く、この言葉がよく使われていました。

たとえば、野球ですとデビューしてすぐに驚く成績を挙げるバッターがいると、敵対チームはプレーを研究して弱点を探り、抑さえ込む対策を講じるため、2年目には思うような働きができなくなることがありました。

では、プロゴルファーにも2年目のジンクスが存在するのでしょうか。

ゴルフでは強力な新人選手が出てきたからといって、強さの秘密をいくら解明しても、その情報を自分が有利に戦うために利用はできません。

ゴルファーに2年目のジンクスがあるとすれば、周りの環境の変化が影響をもたらすことがあると思います。


若手で飛躍的な成績を挙げた選手は、身の回りの環境変化に振り回されることになります。

それまで人知れず地味に努力を続けてきた若いプレーヤーが大化けすると、マスコミは大喜びで世の中に迎えますが、それはしばらくの間の話です。

上手くいった1年目の影響を受け、少し勘違いしてしまっている間に翌年のシーズンがすぐに巡ってきます。

活躍したことにより、取り巻く環境が変わり本来やらなければならないことができない。

たとえば、疲労がたまった疲れた体を休める時間やスウィングの課題を矯正する練習、トレーニングなどです。

しかしそれは環境の変化による準備不足というより、今の自分に何が必要で自分をどう律するかということではないでしょうか。

言ってしまえば、それは取り組む姿勢やメンタルの問題です。

このような状態で翌年の開幕を迎えた選手は、往々にして思うような結果が出ず予選落ちが続くと「こんなはずではなかったと」と焦り、ますますスウィングのリズムやバランスを崩す悪循環に陥っていく──これが典型的な「2年目のジンクス」なのでしょう。

過去を振り返ってみると、何人かの顔も浮かんできます。

ですが確かにここ最近は、ジンクスという言葉を使わなくなりました。

わたしが思うには、それほど名前の知られてなかった若いプレーヤーが毎シーズンのように現れ、それこそ次々に世代交代が進んでいますが、今週の主役はこの選手だけど、次週は彼女、その次はこの子とマスコミが書き立てることで世間もその都度目移りせざるを得ない。

ですから、今シーズン調子が落ちたとしても、そこへ目を向ける人は少ないということなのかもしれません。

昔はその世界の人材に限りがあったので、ジンクスといって話題作りをしなくてはいけなかったのかもしれません。

でも、今は単純に誰もが主役級になれるからといえるのではないでしょうか。

渋野日向子選手が全英女子オープンに優勝してから、稲見萌寧選手や山下美夢有選手、今年に関しては竹田麗央選手と現れてきます。

その間には笹生優花選手や古江彩佳選手、プロ1年目の18歳で日本女子プロのメジャー優勝を果たした川﨑春花選手などと挙げればたくさんいます。

自分の代わりは何人もいる。

2年目のジンクスという言葉そのものは使われなくなったとしても、プレーヤー一人一人の心の中には潜んでいるのではないでしょうか。

自分を律するために、その言葉は自分のなかでは忘れないでほしいと思っています。

「切り替えと自己管理をできる選手は息が長い傾向にありますね」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2024年10月8日号より

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