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初の海外メジャーはセントアンドリュース! 吉本ひかるの全英女子オープン参戦記

サントリーレディス上位の資格でAIG全英女子オープンに出場した黄金世代の吉本ひかる。自身初の海外メジャーで何を感じたのか? どんなことを学んだのか。一週間を振り返ってもらった。

PHOTO/Tadashi Anezaki、本人提供

吉本ひかる 1999年2月25日生まれ。滋賀県出身。滋賀短期大学付属高卒。2017年プロテスト合格(89期生)。昨季、明治安田生命レディス でツアー初優勝を飾る

日曜日 現地入り
「土曜着の予定が台風の影響で日曜に」

――6月のサントリーレディスで3位タイ。その日に全英女子オープン出場を決めたのですか?

吉本 はい。今回はセントアンドリュースですし、自分のレベルがどのくらいか知りたかったので。

――出国はいつでしたか?

吉本 土曜着の予定でしたが、台風の影響で現地入りは日曜の昼でした。そのままセントアンドリュースに向かい、その日は回らず、練習だけして宿に入りました。

――宿はホテルですか?

吉本 一軒家を借りました。4LDKの大きな家で、コースからクルマで20分くらいのところです。大会側からクルマが出るということでしたが、荷物が多かったのでレンタカーにしました。

月曜日 18ホール練ラン
「キャディ&コーチと入念にコースチェック」

――月曜から練ランですか?

吉本 月曜は18ホール回りました。風はなかったのですが、ホールに立つと「どこに打つの?」って感じです。目印がなく、ターゲットがわからないんです。川口淳キャディと中島敏雅コーチと3人で入念にコースチェックしました。

火曜日 9ホール練ラン
「ポットバンカーはめちゃ楽しかった!」

――火曜も18ホール?

吉本 火曜はアウト9ホールを回りました。セントアンドリュースのグリーンは共有グリーンになっていてすごかったです。大きさもかなり巨大で、フェアウェイからグリーンがつながっている感じです。グリーンの横にティーイングエリアがあったりして、日本にはない不思議さを感じました。

名物のポットバンカーもいっぱい練習しました。難しいんですけど、めちゃめちゃ楽しかったです(本人のインスタに動画がアップされている)。バンカーの砂はとても軟らかいんですが、フェアウェイはすごく硬いんです。ちゃんと芝は生えていますけど、ヘッドが入っていかない硬さでした。練習場も硬くて最初は戸惑いましたが、打っているうちに硬さには慣れました。全英対策で入れたローバウンス(バウンス6度でリーディングエッジを削ったもの)のウェッジが役に立ちました。

水曜日 9ホール練ラン
「プロアマがあって宿に戻ったのは夜」

――水曜はプロアマですか?

吉本 今大会は火曜、水曜にプロアマがありました。プロアマがあるとスタートが遅めになるため、水曜はイン9ホールを回りました。セントアンドリュースは日が長いので朝はそんなに早くないんです。その代わり夜が長いんです。宿に戻ってくるのはいつも20時くらいでした。

水曜日 宿は一軒家で自炊
「料理は姉が作ってくれました」

――今回の宿は一軒家ということですが、食事はどうしていたのですか?

吉本 今回のチームは中島コーチ、川口キャディ、間嶋マネジャー、そして姉(百花)の5人。一軒家を借りたので食事は基本、自炊にしました。日本から食材や調味料を持っていき、姉が作ってくれたのですが、カレー、寄せ鍋、サラダなどで、パスタが一番多かったかな。白米も持っていって朝はおにぎりを作ったり、インスタントのお味噌汁を食べていました。コースに行けば朝食、昼食は無料で食べられたので、外食はクラブハウスの食事だけという感じです。サラダやサンドイッチが多く、パスタはその場で作ってくれます。

――お姉さんもクラブハウスには入れたのですか?

吉本 コーチが2名登録できたので中島さんと間嶋マネジャーをコーチ登録して、姉はマネジャー登録です。5人全員、クラブハウスにもコースにも入れました。

――日曜から水曜まで練習日でしたが、どう調整しましたか?

吉本 中島コーチはリンクスの経験がありましたし、川口キャディも全英経験者でした。中島コーチにはリンクスだって日本とやることは同じ。ただ条件(風が強い・ランが出るなど)が変わるだけだと言われて、特別なことをするのではなく、いつものゴルフで全英に挑もうと考えていました。

――観光などはしましたか?

吉本 今回はゴルフに集中しようと考えていたので、どこにも行きませんでした。試合が始まる前にお土産はたくさん買いましたよ。

「風に流されるリディアの球を見て
私だけじゃないってラクになれた」

大会初日 イーブンパー
「風を嫌がらずやり切ることだけ考えました」

――全英女子オープン初日は、イーブンパーでした。

吉本 初日は午後スタートでしたが、その日はとにかく風が強かったです。まずは風を嫌がらないこと。考えたことをやり切ること。この2つを意識しました。コースに入ったとき、本当に風が強かったので「今日はやばいかも」って思いました。練習場に行って打ち始めると私の前にリディア・コーさんが来たんです。それでリディアさんの球を見ていたら、めちゃめちゃ風に流されていたんですよ。それでも本人はまったく気にしていなくて、キャディと「流れるね~」って感じで平然としていたんです。それで「私だけじゃないんだ」って思えたんです。世界のトップ選手だって風に流されるのは同じなんだって。そこで気がラクになったんです。

――どのくらいの風ですか?

吉本 風が強すぎて打てない感じです。突風が吹くたびにアドレスを仕切り直していました。パットになるとボールが微妙に揺れていましたし、風待ちもしていたから、なかなか打てなかったです。


――風は変わりますか?

吉本 セントアンドリュースはアウト、インで風が同じなんです。日本だと各ホールの向きが変わるので風がグルグル変わりますが、ここはずっと同じ方向に進んで行きます。アウトは左からの風、インは右からの風でした。とくに海側に近い10番、11番、12番はすごい風。ボールは飛ばないし、大きく曲がるしで大変でしたが、なんとかイーブンで回れました。

――ブッシュやバンカーにはつかまりましたか?

吉本 コースマネジメントとしてブッシュ、バンカーは徹底して避けるようにしました。ですのでブッシュは1回も入れていません。練ランでもブッシュは経験しませんでした。バンカーは1回入りましたが、マネジメントは上手くいっていたと思います。

――どうやってハザードを避けていくのですか?

吉本 風に流されることを計算に入れてショットします。それが「やり切る」という課題でもありましたが、たとえば風が左から吹いていれば、すごい左を向いて打つんです。それこそブッシュの真上に打ち出すような感じです。私はフェードボールですから風に流されやすいので、それをやり切るか、やり切れないかで結果が変わります。風に対してこうなったら嫌だと思うのではなく、こう打つと決めて打っていました。セントアンドリュースはフェアウェイが広いので風に対応できれば、プレーはしやすいかもと感じました。

大会2日目 5オーバー
「パットが決まらず。ギリギリ通るかな」

――大会2日目は5オーバー。どんなプレー内容でしたか?

吉本 2日目は午前スタート。トップから4組目でした。前半の3ホールくらいは雨が降っていて、とにかく寒かったです。

――今大会はみんなニット帽、ダウンジャケット、レインパンツ、手袋といった装いでした。

吉本 思った以上に寒かったです。ずっと防寒インナーを着ていましたし、雨じゃなくてもレインパン
ツを履いていました。

――雨の影響はありましたか?

吉本 雨は大きかったです。グリーンが軟らかくなったのでボールが止まる感じでした。ただ2日目はパットが決まらなくて……。5オーバーなら予選を通るだろうと考えていましたが、他の選手がスコアを伸ばしたこともあってダメでした。悔しかったですね。

大会3日目
「土曜はリディアのプレーを見にいきました」

――今大会は83位タイ。1打足りず予選落ちでした。土曜はどこかに行きましたか?

吉本 コースに行きました。リディアのプレーが見たかったんです。何ホールか付いて回りましたが、風の対応が徹底していました。私がやりたいと思ったことをやり切っている感じで、すごくいいものが見られました。リディアは同じフェードですし、安定感が高く、とても参考になりました。

――今大会を振り返って、今どう感じていますか?

吉本 予選は通過できませんでしたが、もっとこうしていれば上手くいったかもという手応えは感じています。課題が見えましたし、もっと頑張ろうというモチベーションにもつながっています。結局、自分次第ですけど、海外メジャーであっても課題をちゃんとクリアできれば、戦えると思いました。リンクスは初体験でしたが、自然の中でゴルフをするってこういうことなのかって、ゴルフの原点を実感できたのも大きいです。今大会は日本人選手もたくさん出場していて、安心してプレーできましたし、本当にすごく楽しかったですね。自分のゴルフ人生においても貴重な経験ができたと思っています。また海外メジャーのチャンスがあれば、挑戦したいです!

週刊ゴルフダイジェスト2024年9月24日号より