Myゴルフダイジェスト

【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.193「非常識」をやってみる

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Shinji Osawa

前回のお話はこちら

先日行われたシニアツアー新規大会の『倉本昌弘インビテーショナル イーグルカップ』は、5位タイでした。特にパッティングがよかったんですが、本戦の2日間、朝のパッティンググリーンで一回も球を打たんかったんです。そして本番では、パターの素振りもちょこっとやるくらいで丁寧な素振りはしてません。そしたら、パターがイイ感じで入ってくれました。

実は、朝のパッティング練習と打つ前の素振りは、ここんとこずっとしてないんです。理由は2つ。打つときに余計な先入観を持たずに「見た感じ」で打ちたいからいうんが1つ。もう1つは、誰もがやる常識的なことをやったかて、たいした結果が得られんなら、そういったものを一切やらん「非常識なゴルフ」をやってやろういう発想です。


先日のパリ五輪で、男子バレーボールは50年ぶりのメダルを目指し、結局、あかんかったけど、その関連で1972年のミュンヘン五輪で日本が金メダルを取ったときの番組をやっておりました。

当時の松平監督は、普通にトスしてアタックしてという常識的なことをやっとったら身長が高い外国人には勝てないと考えた。それで、ひもをつけたボールをクルクル回してその上を選手にジャンプさせたり、トランポリンの上で跳ねながらボールを受けるといった非常識とも言えるトレーニングをやったと。それで選手のボールさばきは飛躍的に向上し、クイック攻撃、時間差攻撃、フライングレシーブといった当時どこもやっていない戦術を駆使し金メダルを取ったいう、まさに非常識の勝利で、今ではそれが世界の常識になっているということなんですわ。

そんなん見てたら、ああやっぱそうやなと思ってね。僕が5位に入った試合の最終日の1番ホールでいきなり7メートルのバーディパットが入ったんです。練習してないから、まさにその日の一発目。ということは「見た感じ」がピッタリおうてるいうことで、もしスタート前に練習して余計な情報を入れとったら、このよい感覚が失われてたいうことですわ。惰性でやっとる常識的なことを疑い、非常識な方法をやってみる。おすすめです。

「朝の練習も、素振りもしない。『常識』が惰性になっとるんを気づかせてくれます」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年9月17日号より