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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.826「普段の生活から状況に応じて的確に判断し行動できるのがツアープロだと思います」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


プロゴルファーの方は、1カ月ぐらい自宅に帰らず遠征することがあると聞きました。着替えや備品などクラブ以外の荷物とその量が気になりますが、どのような荷造りで移動しているのですか。(匿名希望・38歳・ゴルフ歴18年・HC12)


アメリカでのツアーは、日本の面積の25倍以上もある国が主要舞台です。

そのため、開催地からその都度本拠にしている自宅まで帰るよりも、そのまま次の開催地へ転戦したほうが経済的にも体力的にも負担が軽いケースは多くなります。

それに比べれば日本の場合は、範囲は狭いですがやはり移動の苦労は感じます。

ただ、休みなく出場したとしても、日本国内ツアーでは4週間以上も自宅に帰れないことはないでしょう。

たとえばUSLPGAでは、西海岸シリーズやフロリダシリーズなど、近隣の地区・地方でのトーナメントが数試合まとめて組まれ、スケジュールを立てやすいようになっています。


しかし、滞在や食事、移動に要する費用はみなさんが想像する以上にかかるものですから、いくら賞金を稼いでいるトッププレーヤーでも経費に糸目をつけないことはありません。

たいていはビジネスホテルを利用して、長年同じコースで行われる大会に出ているうちに地元に知り合いができて、その関係先から現地での移動用に車を貸していただくなど、経費の節減にはそれぞれが工夫をしている選手もいます。

年間30試合以上ものトーナメントを転戦する選手たちは、ある意味で旅人同士のような関係でもあります。

最初は右も左も分からないルーキーが3年もすると慣れて、宿舎での過ごし方や航空便の予約の仕方など、さまざまな振る舞いができてきます。

チェックインして食事の段取りをつけ、コースまで自分で移動。

朝にはさっさと荷物をまとめチェックアウト。

これを自分一人でやるのが基本です。

ホテルやモーテルの部屋に着いたら、持ってきたスーツケースの荷をほどき、出発前には荷造りをする。

ゴルフやテニスなど個人競技のツアー選手は荷物のパッキングが上手いみたいです。

ツアーを転戦するプロゴルファーにとって、荷物はできるだけコンパクトにする習性が身に付いています。

ただでさえ、商売道具のクラブを収納した総重量30キロ近くなるキャディバッグがあるのですから、ほかの備品はなるべく少なく軽くしたいです。

しかし女性の場合は、化粧品やヘアドライヤーや、中には自分専用のアイロンなど、大きなスーツケースにかなりの量の荷物を詰め込んでくる選手もいます。

トーナメント開催週は、月曜日か火曜日に現地入りして前夜祭やプロアマがあり、木曜日の初日から日曜日の最終日まで毎週5〜6泊するのが通常のパターン。

この日数に見合ったゴルフウェアのセットに、宿舎内や外出する際に着用する着替えを数セット。

前夜祭がある場合は、ドレスや靴も追加されるので衣料は結構な量になります。

それにノートPCやモバイル機器など、その他に携帯する荷物もあります。

私がアメリカを転戦していた当時は、移動中は両肩に大きなカバンとキャディバッグを持ち空港や駅構内を移動していました。

さらにいまのような宅配便が存在しなかったので、移動方法を含めいまよりずいぶんと大変でした。

あと、日本国内だと高速道路が延伸・拡充したことで、トーナメント会場まで、自分の車で移動することも増えたと思います。

車なら荷物を気にせず、トレーニング機器やほかの備品も積んでいけます。

わたしはもともと運転するのが嫌いじゃないほうだし、誰にも邪魔されずに考え事のできる長距離ドライブは苦になりません。

遠隔地での試合では空路利用も避けて通れませんが、荷物の延着や紛失のリスクは少なからずあります。

日本国内では経験ありませんが、国際便では荷物が行方不明になったことが2回あります。

いつだったか、荷物が届かなくて着替えがなくなり、バスルームで下着を洗濯して洗面台の横に付いてるドライヤーで乾かしたことあったっけ(笑)。

誰だってそんな珍道中は一度や二度はあると思いますが、それを含めて臨機応変に対応して日々を戦っていくことが、プロゴルファーという職業なのかもしれませんね。

「初めはフワッとしている女子プロも、ツアーを転戦していると年々とたくましくなってくるものです」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2024年8月20・27日合併号より

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