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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.190「勝てないジンクスに勝つ」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Tadashi Anezaki

前回のお話はこちら

全英オープンはザンダー・シャウフェレが優勝しました。ずっとメジャーに勝てないと言われとったけど、今年に入ってこれで全米プロに続いてのメジャー2勝目ですから、憑き物が落ちたいうか、メジャーのプレッシャーから解き放たれた感じです。

勝負事には「勝てない」理由がジンクス的に信じられていることって多々あります。

ジンクスとまでは言わないかもしれんけど、最近は180センチは言うに及ばず、(スコッティ・)シェフラーみたいに190センチ並みの大男のハードヒッターやないと勝てないような感じがあるやないですか。そんななかで全英オープンは、2021年のロイヤルセントジョージスのコリン・モリカワ、昨年のロイヤルリバプールのブライアン・ハーマン、そして今年のロイヤルトゥルーンのザンダー・シャウフェレと、170センチ台の小兵と言っていい選手が優勝しました。


テクニックでパワーに勝てるいうんが全英の面白いところ。特に、ハーマンのような170センチのショートヒッターが190センチのハードヒッターを負かすわけやからね。大きいのが勝ったり、小さいのが勝ったりは、ゴルフの面白いところです。

ザンダーは、メジャーに勝てないというジンクスめいたものを自身で覆したことで、メジャー2連勝につなげたんかもしれません。

全英シニアオープンではチェ・キョンジュが、韓国勢として初めて欧米のシニアメジャー大会を制覇しました。これも「勝てない」ジンクスに勝った例かもしれませんわ。

今年の会場、カーヌスティなんかはフェードが有利と言われることが多かったコースです。

6番ホールは、左はOBで右に3つの大きなバンカーがあるんですけどね。かつてベン・ホーガンが全英のときに、毎日、左からのフェードを打って、4日間連続でバーディを獲ったという攻略ルートがあって、これが「Hogans Alley」(ホーガンの小径)と言われてフェード有利のひとつの論拠でした。

でもあのホールなんかでも、今の選手の飛距離やったら右のバンカー群は全部越えるから、それならドローでええわなっていう話になるわけです。下が固いから転がって距離も出るしね。

ジンクスとは思い込みなんかもしれませんね。

「メジャー2勝目挙げたザンダー。もともと上手い選手やけどね」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年8月20・27日合併号より