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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.825「トップランナーが出現すれば後に続く人間が現れるのが世の常です」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


今年は日本女子選手が大活躍していて、世界的に見てもタイや中国などゴルフにおける途上国が台頭してきていますが、この傾向をどのように感じていらっしゃいますか。(匿名希望・60歳・HC7)


先日のエビアン選手権では、古江彩佳選手が見事優勝を飾りました。

この試合、解説を担当させていただいていたわたしは、彼女の粘り強く、鮮やかなプレーぶりに鳥肌が立つほど興奮しました。

全米女子オープンを制した笹生優花選手に続き、日本人女子として今年だけで2度目のメジャー優勝。

日本の女子選手の強さに世界が舌を巻くことになりました。

古江選手本人もコメントしていましたが、オリンピックが開催されるフランスで行われたメジャー第4戦での勝利はとくに感慨深かったでしょう。

「東京、パリと代表選考に漏れた悔しさはありましたけど、同じフランスでメジャー大会に優勝できたので、その気持ちは晴らせたかなと思います」


彼女は今年の初めから五輪への出場権争いのことをあえて口に出して意識してきたように見えました。

笹生選手をトップに、アメリカを主戦場にする畑岡奈紗選手、古江選手が残りの枠を争っていたのに加えて、国内で戦う山下美夢有選手らが僅差でしのぎを削る展開でしたが、全米女子プロにスポットで参戦した山下選手が2位タイに食い込んだことで、古江選手は出場権を獲得できませんでした。

オリンピックの開催年に当たっただけに、ツアーでの戦い方にも微妙な影響が出たような気がします。

昨年から、日本選手の中でポイントレースのトップを走ってきたのは畑岡選手です。

そこへ笹生選手の全米オープン優勝。畑岡選手は日本代表候補の二番手に後退。

さらに不運なことに、6月のショップライトLPGAクラシックの2日目のスタート直前、前日に行ったボール捜しの不正処理で失格となってしまいます。

この影響かどうかはわかりませんが、最後のチャンスとなった全米女子プロは予選落ち。

五輪出場の道が途絶えたショックが続いたのか、エビアンでも予選落ちしてしまいました。

また、エビアンでは笹生選手も振るわず予選ラウンドで姿を消し、悔しい思いをした古江選手が栄冠を手にするという、ある意味で皮肉な結果とも言えました。

優勝セレモニーを前に空から日の丸の国旗を携えたスカイダイバーが舞い降りて来るシーンには声も出ませんでした。

表彰式の会場に君が代が流れたのですから、感激もひとしおでした。

日本からは出場10選手のうち8選手が予選を通過し、トップテンには岩井明愛選手も食い込みました。

このような成績や勢いは、突然に降って湧いた現象ではありません。

何十年も前から日本女子プロ協会をはじめ、国内の関係者、団体、企業が協力してトーナメントの環境や日程を調整、開催コースのコンディション作りに苦心し、選手を育成強化してきた結果です。

誰が貢献したとか、どこのおかげと明言はできませんが、みんなで日本のゴルフ界を育んできた、その成果なのだと思います。

1998年、パク・セリ選手が全米女子プロと全米女子オープンに優勝、彗星のように登場して以降、怒涛の勢いで韓国勢が世界のゴルフシーンを席巻しました。

誰をも惹き付けるトップランナーが現れれば後継者は続きます。

タイでは、2010年代の初めに現われたアリヤ・ジュタヌガン選手の活躍に刺激された選手たちが続々と輩出されています。

今回のエビアンでも存在感を示したパティ・タバタナキットや、パジャリー・アナナルカーン、アタヤ・ティティクルの各選手など有力な若手が出てきています。

ちなみにですが、エビアンの最終日、古江選手のスタート時のアナウンスを聞いてわたしは感心しました。

「フロム・ジャパン、アヤカ・フルエ!」

完璧で違和感のない日本語名アナウンス。

これは発音のしにく日本人の名前をちゃんと練習してくれているのだと。

これも日本のゴルフレベルが全体として向上してきた成果なのかもしれませんね。

もちろん、こうした傾向は日本のみならず、今まで発展途上だった東南アジアの各国でも徐々に進んでいくことでしょう。

これからの頼もしい変化が待ち切れないくらいです。

「強くなってもおごらず謙虚な気持ちがあれば、人気は継続するものだと思っています」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2024年8月13日号より

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